オフィスでホール&オーツからプレゼントされたギターを弾く高橋氏(撮影/写真部・堀内慶太郎)
オフィスでホール&オーツからプレゼントされたギターを弾く高橋氏(撮影/写真部・堀内慶太郎)

 設立50周年を迎えるウドー音楽事務所。ボブ・ディラン、デヴィッド・ボウイ、ミック・ジャガー、リンゴ・スターなど多くのスーパースターを招聘してきた。来日中のスターの管理をするのはツアー・マネジャーの仕事。40年以上、ツアマネを務めた高橋“TACK”辰雄代表がその素顔を語った。

 12月に11年ぶりの新作を発表したザ・ローリング・ストーンズ。そのボーカル、ミック・ジャガーがアルバム「プリミティヴ・クール」(87年)を引っ提げて、88年にソロとして初めて日本ツアーを行ったとき、ウドー音楽事務所が招致した。大阪公演がキャンセルになった内幕を明かしてくれた。

「ある人から奈良のお寺にイギリス人の住職がいると紹介されたんですけど、ミックがそこに行きたいと言うので、大阪から奈良まで行ってみることになったんです。ミックは初めての来日公演でしたし(ローリング・ストーンズとして初めて日本公演を行うのは90年。73年に予定された初来日公演は直前になって中止となっている)、お寺のような所にイギリス人がいるというのも興味深かったんでしょう。日本みたいな小さな国がなぜこれだけ栄えているのかということにも興味があったんだと思います」

 簡単な住所と地図だけをもらった高橋氏がハイヤーを手配しようとしたら、ミックが「君が運転してくれ」と言った。

「『大阪の道、知らないんだけど……』と思ったんですけど、レンタカーを借りて、道を間違えないように一生懸命調べて行きました。山の中にあるお寺に着いたら、その住職から習字を教えてもらったり、お経を読んでもらったりしました。それで、夕飯も食べていくことになって、住職2人と肉を買いに行って、しゃぶしゃぶを食べました。そのお堂がおもしろくて、お祈りするところの両サイドに縦2メートル、幅90センチくらいの箱みたいなものがあって、それを開けるとレコードがたくさん入っていました。ターンテーブルもあって、ジャズとか聴きながら夕食を食べましたよ。結局、そこに泊まることになったのですが、部屋が一つしかなかったので、僕は大阪に戻って、翌朝10時ごろに迎えに行くことにしたんです」

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