17年はバラ色の未来に見えるが、世界は単純ではない。神様はちゃんと「落とし穴」も用意している。

 16年12月、独ベルリン中心部のクリスマス市に大型トラックが突っ込み、12人が死亡、50人近くが負傷した。容疑者は移民系のチュニジア人の男。メルケル首相が受けたダメージは想像に難くない。

 近年、欧州では右翼政党や反体制派が台頭。12月に国民投票が行われたイタリアでは、EU離脱を掲げる「五つ星運動」が勢いづく。しかも17年は、オランダ議会選(3月)、仏大統領選(4、5月)、秋には独連邦議会選が続く選挙イヤーなのだ。

『EU分裂と世界経済危機』(NHK出版新書)の著者でニッセイ基礎研究所の伊藤さゆり氏は言う。

「オランダや独、オーストリアはどこも15年夏から主流派政治勢力への支持が急低下。明らかに移民・難民危機が影響しています」

 仏大統領選では、保守派フィヨン氏と極右政党の国民戦線党首ルペン氏が一騎打ちの様相。世論調査ではフィヨン氏が有利とされるが、予断を許さない。

「ルペン氏は、脱悪魔化戦略といって普通の政権を担えるようイメージ戦略を進め、社会福祉の充実もうたっています。左派支持者がルペン氏に味方する可能性もある」(伊藤氏)

「大手世論調査は、英のEU離脱、米大統領選、伊国民投票と3連敗中です。3度あったことは4度あるかもしれない」(豊島氏)

 リスク回避で世界の投資マネーが逃げ込むのが、日本円。いま円高といわれてもピンとこないが、市場関係者の間では「100円から117円は真空地帯」とされ、どうなっても不思議ではないという。

「1カ月で10円超の円高もありうる。極右政党の台頭は、落とし穴のような円高を招くでしょう」(同)

 波乱の年の幕開けだ。

週刊朝日 2017年1月6-13日号