津田大介「欧州のヘイトスピーチ議論の波は日本にも」
連載「ウェブの見方 紙の味方」
合意から半年が経過した12月6日、欧州委員会は5月の合意で約束されたヘイトスピーチ対策が実行されているのかを評価したリポートを公表。そこではこのように報告されていた。
「対処までに24時間以上を要しており、目標を達成できてはいない。24時間以内に審査されたケースは40%に過ぎない」
「この数字は48時間以内であれば80%以上となる。4社がさらに努力をすれば、目標は達成されるはずだ」
欧州委員会は半年の検証期間を経て「4社のヘイトスピーチ対策はいまだ不十分」と評価したのだ。
このリポートをまとめた欧州委員会の法務・消費者・男女平等担当委員のヴェラ・ヨウロヴァー氏は、12月4日付のフィナンシャル・タイムズの記事でこのように話している。
「4社が『法律で強制されなくてもヘイトスピーチ対策は可能だ』と私たちを説得したいのであれば、数カ月中に迅速かつ強力な対策を講じればよいのです」
つまりこれは4社の現状のヘイトスピーチ対策では不十分であり、自主的に迅速な対応ができないのであれば、法律をつくって強制力を持たせるぞ、という「最後通告」だ。
2017年上半期中にこの問題が大きく動く可能性は高い。その波はきっと日本にも押し寄せるはずだ。
※週刊朝日 2016年12月30日号
津田大介(つだ・だいすけ)/1973年生まれ。ジャーナリスト/メディア・アクティビスト。ウェブ上の政治メディア「ポリタス」編集長。ウェブを使った新しいジャーナリズムの実践者として知られる。主な著書に『情報戦争を生き抜く』(朝日新書)
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