西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、オフシーズンの過ごし方の変化を指摘する。

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 日本ハムの大谷はハワイへの優勝旅行でも体を動かしていたという。昨年も巨人の菅野がハワイで練習を行った記事を見たし、2013年に日本一となった楽天・田中も、メジャーへポスティングシステムによる移籍が決まっていたのもあるが、キャッチボールを行っていた。今は、まったく体を動かさない日がないというくらい、選手の体調管理への意識は高い。

 私の現役時代は、どちらかというと、シーズンの疲れを抜くために「休むのも仕事」という考え方だった。優勝旅行といえば、ほとんどゴルフ漬け。1日36ホール回るのは当たり前だった。ゴルフもトレーニングの内である、といえなくはないが、次のシーズンへ向けての自主トレスタートは翌年の1月10日前後だった。12月から含めると、40日間は体を休めることを考えていた。でも今は、疲労を効率的に抜くためのトレーニングも確立されている。

 時代はどんどん変わっていく。選手は、いろんなトレーニング方法が出てきて、何を採り入れるか、何が自分に合うかをオフの間に試す時期でもあるよね。シーズン中にトレーニングの方法論を変えることはできないが、今の時期ならできる。本当に選手たちは野球漬けの日々を送っていると頭が下がる思いだ。

 選手の意識の変化は日本代表の選考の在り方にも大きな変化をもたらす。来年3月のWBCに向けて、小久保監督、そして日本野球機構(NPB)は、年内に一部選手を発表するという。本来なら、出場登録する28人をそろって発表するという考え方が一般的であるし、さらにいえば、ふるい落としを代表合宿で行い、2月の最終登録直前に28選手を選出することが、自然の流れではある。

 
 今回、2段階の発表を行う構想であると伝え聞いたが、そこには小久保監督の親心を感じる。早くから来年に向けて準備をする選手たち。ましてやWBCは大リーグ公認球を使うわけで、日本の統一球とは違う。投手は特に時間をかけて対応していく必要があるし、選ばれないなら、WBC球で練習したくないと考えるのが普通だ。感触の違うWBC球で練習すれば、体の違った部分が張ってくるし、故障のリスクも高まるからだ。その点も踏まえ、一日でも早く決まっている選手は公表し、さらに日本人メジャーリーガーの招集次第で当落線上にある選手たちにも、1月に早い段階で伝えてあげるという考えは賛成である。

 さらに言えば、小久保監督は2月23日からの代表合宿で28人ちょうどしか招集しないという。この考え方ができるのは、侍ジャパンが常設化され、小久保監督が13年の就任から3年をかけてチームを作ってきたことが大きい。前回までのように大会の直前に代表監督が決まっていたら、そうはいかない。故障者やコンディション不良の選手が出たとしても、今まで小久保監督の下で代表に選ばれてきた選手は70人前後いるわけだから、性格や特徴までわかった上で入れ替えができる。選手も監督の考えはわかっているはずだ。

 ソフトバンクの松坂も、プエルトリコのウィンターリーグで来季に向けて、試行錯誤を続けている。以前は12月といえば、契約更改交渉のお金の話ばかりだったが、この時期でも野球そのものの話題が尽きなくなった。時代の移り変わりは本当に早いと感じる。

週刊朝日 2016年12月30日号

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東尾修

東尾修

東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝。

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