プレミアムフライデーのロゴマーク。給与は増えずに、笑顔になれるか (c)朝日新聞社
プレミアムフライデーのロゴマーク。給与は増えずに、笑顔になれるか (c)朝日新聞社

 月末の金曜日は午後3時の退社を──。経済産業省や経団連が主導する消費喚起策「プレミアムフライデー」が年明け2月から始まるという。この秋、米国の年末商戦に倣ってユニクロなど一部の小売りで実施したセール「ブラックフライデー」の成果も怪しいものだが、今度は毎月末の金曜日を買い物の日とするわけだ。アベノミクスがお金をジャブジャブ増やし、借金の金利を下げても動かぬ消費に業を煮やした末の“苦肉の策”である。

「午後3時に退社となれば、居酒屋や家でお酒を楽しむ機会や時間が増える」(酒類メーカー社員)

「家電好きの人なら、金曜の会社帰りにじっくり見る時間が持てる」(電機メーカー社員)

 といった声もメーカー側からは聞かれ、もちろん期待感はある。

 だが小売りは、すでに自前の優待を実施。例えば、イオンが20日と30日を「お客さま感謝デー」とし、外食は「祭り」と称した特売を連発している。効果について、ある流通関係者は「機会はうれしいが、今は物不足の時代とは全く環境が違う。割引すれば売れるわけではないので……」と冷静な見方をする。

 経済ジャーナリストの荻原博子氏は「天下の愚策」と、この政策自体をこう切り捨てる。

「仕事は減らず、給料が減っているのが実態。だいたい午後3時に帰れますか。官僚的な発想で、政治家もバカなんじゃないの」

 荻原氏はさらに続ける。

「1丁目1番地は給料を上げること。でも実際の政策はそうならないものばかりで、逆に非正規雇用を増やすわ、同一労働同一賃金案にしても低いレベルに給料を下げるものばかり。くだらないことに税金を使っている場合じゃない」

 庶民の節約意識を象徴するように、12月9日の世界短水路選手権の女子50メートルバタフライ、日本新で銅メダルの池江璃花子選手は、賞金の使い道を問われ、こう答えた。

「貯金します。老後のために」

 先が見えないご時世、さあ買い物、とはいかないのかも。

週刊朝日 2016年12月30日号