「熟年婚活」の今を作家の家田荘子氏がリポートする (※写真はイメージ)
「熟年婚活」の今を作家の家田荘子氏がリポートする (※写真はイメージ)

 地方の熟年婚活は、目立たない服装を身にまとい、まるで同窓会のノリだった。だが、待っていてはいけないのが中高年の必須条件のようで、命の幕を閉じる直前まで、ドキドキの恋ができるものらしい。「熟年婚活」の今を作家の家田荘子氏がリポートする。

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 現在、結婚相手紹介サービス業は、全国で数千から数万社も存在し、利用者は50万人以上にものぼる。

 これまで都会の熟年婚活をルポしてきたが、地方の婚活はどうなのだろうか。全国6支部、会員2千人の民間福祉団体「太陽の会」宇都宮支部へ足を運んだ。太陽の会は、入会費2万円。月会費は男性3千円、女性2千円とリーズナブルで、年齢の上限はない。

 初秋の日曜日、毎月開かれる昼食付き会費制懇親会が、チサンホテル宇都宮のホールで開かれた。女性は黒っぽい服でスカートでない人が目立ち、足元は安定するローヒールや地味なひも付き靴。男性もおしゃれ感が少なく、高齢者定番のチェックシャツかゴルフウェアで、運動靴を履いている。目立たない服装が、地方の婚活の常識なのかもしれない。

 今回の参加者は22人。まず前に出て自己紹介をした。内容は自分のことより、血液がきれいになる食物や、脂肪を減らす方法など健康や病気に関することが多い。中には「中高年の婚活に行政が関わってほしい」と演説っぽくしゃべる男性もいる。自己紹介が終わると、各テーブル席で男女4人ずつの歓談が始まった。時間が来たら、男性2人が別のテーブルへ。移動をする度、「久しぶり!」という声が聞こえてきた。

「何回か顔を合わせるうちに皆、面倒見がよくて、仲間になっちゃうの」

 その日は欠席したが、男性2人と「友達つき合い」をする女性(63)の言葉を思い出した。

「あいつ(72)は、定年退職してから熟年離婚されたんだ。酒が原因でね」

「あの人(72)は、奥さんが死んでから14年も独り暮らしをしていて……」

 参加者が人の素性を私に教えてくれる。お互いが知りすぎて、恋愛に発展しにくいらしい。婚活というよりも同窓会のノリに近いが、それでも太陽の会では年間平均6組が成婚し、これまでに1200組以上のカップルを誕生させている。

 その日、50歳以上の女性10人のうち、最高齢が82歳。76歳が3人、69歳が2人いた。女性は実年齢よりかなり若く見える。一方、男性最高齢は78歳。年相応かそれ以上に見えた。

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