ミッツ・マングローブ「芸人に迸るアイドル数値の落としどころ」 (2/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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ミッツ・マングローブ「芸人に迸るアイドル数値の落としどころ」

連載「アイドルを性せ!」

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芸人の隆盛で、「アイドル」のスタンスが大きく変わった? (※写真はイメージ)

芸人の隆盛で、「アイドル」のスタンスが大きく変わった? (※写真はイメージ)

 反対に、『芸人』たちのアイドル自意識は、自他ともに高まっています。元来、『イケてる』花形職業であることに間違いないのですが、それでも最近は頓(とみ)に「自分は言うても汚れです」「ケツを出すのも厭いません」と大声で謳いながらバランスを取りつつも、アイドル的文脈で扱われる『芸人』に、世間もさしたる疑問を抱かなくなりました。現にアイドル性の高い芸人さんはたくさんいます。それは顔が整っているとかお洒落だとか歌が上手いだけではなく、「天性のアイドルポテンシャルの高さに自分で気付いてはいるものの、芸人としてはそれが邪魔で、芸人然とした反王道・非花形な自己を保とうとしているが、本能的に己のアイドル性を自意識の中に抱えてしまっている」という人もいて、まさに究極の『こじらせ』。そんな自我のせめぎ合いを観ているのは面白く、また妙にセクシャルに映ります。その代表格と言えるのが、オードリーの若林正恭さんではないでしょうか。

 彼ほどアイドル性が迸(ほとばし)っている芸人を、私は見たことがありません。そして、望む望まないは別として、彼はそこをしっかり自己認識できているような気がするのです。電化製品のCMで、妻役の杏さんに向かって「寒がりぃ!」とブリッ子する姿、あれは照れとむず痒さを逆手に取っていると見せかけて、彼の本能が「俺は、これをやっても許される」と判断した賜物だと、私は踏んでいます。実際に、あの「寒がりぃ!」を観ても、イラッともカチンとも、そしてお笑い的に「寒い」とも感じないのは、やはり彼のアイドル力が高い証拠です。

 いつも横に『記号的アイドル』の天才(春日俊彰)がいることで、より浮き立つ『若さま』の性(さが)。中和と強調の絶妙なバランス。聖子ちゃんの隣でうつむくヨシリンこと柏原芳恵、宮沢りえと一緒に大相撲観戦をしていた西田ひかるの方が、やけに生々しかったのと似ています。

週刊朝日 2016年12月9日号


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ミッツ・マングローブ

ミッツ・マングローブ/1975年、横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後、英国留学を経て2000年にドラァグクイーンとしてデビュー。現在「スポーツ酒場~語り亭~」「5時に夢中!」などのテレビ番組に出演中。音楽ユニット「星屑スキャット」としても活動する

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