除草作業をする高齢者
除草作業をする高齢者
仕事を終えて一息つく田崎さん
仕事を終えて一息つく田崎さん
シルバー人材センターで紹介している遺跡発掘補助の仕事(写真:シルバー人材センター提供)
シルバー人材センターで紹介している遺跡発掘補助の仕事(写真:シルバー人材センター提供)

「“下流”“過労”の老人になりそうだ、と意識し始めたら、年金や社会保障の勉強をしなきゃだめ。勉強会などに参加して、積極的に知識を得るように」

 こう訴えるのは、全日本年金者組合東京都本部の年金相談室長、芝宮忠美さん(73)。人のお金の相談に乗る立場だが、自らも生活保護水準で暮らす“下流老人”だと自嘲する。

 外資系ホテルに32年間勤め、60歳で定年退職した。6カ国で働いてきて、年収は700万円ほどあった。海外暮らしの長い華麗な会社員生活に見えたが、実は落とし穴が。日本で働いていたのは8年ほどのため、納めた保険料が少なく、定年後に十分な額の年金を受け取れないことがわかった。

「まだ海外で暮らしていた50代のときに、そのことを知りました。日本へ帰国前に今後のことを考え、制度のことを勉強したり、住宅費や医療費をどう抑えるかを考えたりしました」

 自らの体験を踏まえ、今はアドバイスする側に転じた。国会で“年金カット法案”が話題になり始めてからは、年金額への不安を訴える相談が目立つという。

 年金や社会保障の制度はわかりにくく、変化も激しい。ただ、生活を守るためにはよく知る必要がある。

 たとえば、無年金対策を盛り込んだ法が今国会で成立した。公的年金の受給に必要な加入期間を今の25年から10年に短くする法律で、無年金だった約64万人が対象となる見込みだ。

 神奈川県内の68歳の男性(通称こんちゃん)は今は無年金だが、来秋から年金が支給される見込み。大手メーカーの正社員なども含めて職を転々とし、保険料を十分に納めてこなかった。法成立で救われる。

 こんちゃんは「俺だって、生きるために新聞だけは読んで情報収集しているよ。年金事務所に行って確認したら、正社員時代に払った年数で大丈夫だった。でも、年金は少ないだろうし、これからも仕事は続けるよ」。

 今は解体業の仕事を中心に清掃やペンキ塗りなど、日給約7500円の仕事をしている。もらえる年金は高額ではなさそうなため、少し前にできた“彼女”におごるためにも仕事を続けたいという。

 神奈川県内の田崎昭生さん(77)も無年金で、今は生活保護を受けている。

 68歳まで建設会社の社宅に住みながら、現場仕事を続けてきた。国民年金の保険料は払ったり、払わなかったりで、受給資格を得る年数に満たない。建設会社をやめてから、今は週に3日ほど朝8時から夕方5時ごろまで働く。仲間と2人組で、清掃や片付けなどの仕事をしているが、最近になって、働く喜びを感じるようになったという。

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