張りのある低い声でしゃべる長谷川さんは、澄んだブルーのシャツに白いパンツを合わせ、おしゃれだ。関西大学卒で、和装洋品店卸業の会社役員を務める年収700万円の夫(67)と出会ったのは、長谷川さんが入会して8カ月後のことだった。

 長谷川さんは「相手を尊敬できなくなって」、25年前に離婚した。一方、15年前に「嫁の代わりはいても親の代わりはいない」と言う夫にプッツリ切れて離婚したのが、長谷川さんの友人の恵子さん。

「娘が出産した時に、『これからはお母さんの人生を楽しんで、結婚したら?』って言ったんです。お茶飲み友達ならいいかなと入会した最初の会はひどくて。五十数万円も払い、パーティーの度に1万円。出会いがないまま2年経った時、やめますと言ったら、1人紹介されて9カ月つき合ったけど、サクラで……。それで長谷川さんに誘われて茜会に入ったんです」

 恵子さんは薄化粧で、黒白柄のワンピースがよく似合う、こざっぱりとした女性。現在は産婦人科病棟で、ルームアテンダントをしているが、婚約者の家の改築が終わり、婚姻届を出したら、寿退社の予定だ。

 茜会の場合、書類審査でОKが出ると、男性から女性に電話をしてお見合いの日を決める。ところが、長谷川さんの相手は、すぐに電話をかけてこなかった。

「失礼な人だわと思ってたら、『海外旅行へ行ってました』って、やっと電話が来て。会ったら話が弾んで『今度、旅行に行こう』って誘われたんです。『どこへ行きたい?』と聞かれたから、気軽に『イタリアのクレモナ』って言ったら、トントン拍子に進んじゃって。これは大変だ、って娘に会ってもらいました」

 相手は、海外にスキーに行くほどのアウトドア派。出会って間がなくても、旅行へ行けば、同じホテルの部屋で過ごすことになる。

「たまたま淡路島のホテルの無料宿泊券があったから、『行きませんか?』って誘ってみたんです。だって、一緒に夜も過ごしてみないとわからないでしょう? 食事の仕方も見ることができるし……」

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