──米国の黒人音楽、ブルースを聴くきっかけは?

仲井戸:ストーンズやアニマルズ、ゼムの日本盤ライナーノーツは自分にとっての教科書だった。マディやウルフ、それからチャック・ベリーとの出会い。ブライアン・ジョーンズが好きなエルモア・ジェイムズってどんな音楽をやっているんだろう?とか興味を持って、新宿のレコード店に通いつめたよ。もう夢中で、メシの時間も惜しんで音楽を聴いていた(笑)。

鮎川:俺が久留米で初めてアメリカのブルースを聴いたのは、ヤードバーズとサニー・ボーイ・ウィリアムソンが一緒にやったアルバムだった(1963年)。それから徐々にB・B・キングやジョン・リー・フッカーの国内盤も出たけど、俺はマディを聴いてみないと謎が解決しない!と考えていた。ストーンズのバンド名の元ネタだし、「アイ・キャント・ビー・サティスファイド」もやってるしね。初めてストーンズを聴いて5年経って、ようやくマディの日本盤が出たんです。

──1960年代の若者のブルースの入り口は、ストーンズだったのでしょうか?

仲井戸:俺はマコちゃん(鮎川さん)よりちょい年下だけど、1960年代にティーンエイジャーでロックを好きになった奴はみんなストーンズとかを経由してブルースに入っていったよね。彼らにも若者を啓蒙する意図はあったようで、アメリカでテレビに出演するとき「ハウリン・ウルフも一緒じゃなきゃ出ない!」とごねたりね。ウルフの演奏を嬉しそうに横で見ていたり。

鮎川:一見ヨレヨレのおっちゃんに見えるブルースマンが最高にカッコいいということを教えてくれたのがストーンズだったね。

──もし「ブルー&ロンサム」の続編が出るとしたら、リクエストしたいブルース曲はありますか?

鮎川:とんでもない! ストーンズがやるものを有り難く受け入れるだけですよ。恐れ多い(笑)。

仲井戸:でも第2弾、やりそうだよね(笑)。

鮎川:50年以上やっているストーンズだけど、常にアルバムを発表したりツアーをしたり、動き続けなければならない。でも、このアルバムでは子供みたいに楽しそうにやっているのが良いね。予測なんか立たない、その瞬間を重視するのが、俺がストーンズから教わったロックのやり方だし、これからも追求していきたいです。

仲井戸:このアルバムはひときわ楽しそうだね。ストーンズが音楽を創り続けることに喜びを感じているのが伝わってくる。キースはいくつになってもギター小僧だし、ミックも肉体と闘いながら自分を鼓舞して磨いている。彼らは無邪気なロック小僧なのと同時に、俺たちの燦然と輝くお手本なんです。俺たちがロックというものに対して持っているイメージを体現するストーンズが、2016年によくぞこのアルバムを届けてくれたと感謝しています。(構成 ライター・山崎智之)

週刊朝日 2016年12月9日号