放送作家でコラムニストの山田美保子氏が楽屋の流行(はや)りモノを紹介する。今回は、「基之米」について。

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 新米の季節になり、マツコ・デラックスさん出演の「ゆめぴりか」をはじめとする、お米そのもののCMや、ジャー炊飯器のCMを見かけるようになった。

 マツコさんは、タイガー魔法瓶「GRAND X」シリーズのCMにも出ているのでW出演となる。おいしそうにたくさん食べてくれる人の筆頭だからだろう。

 そんなマツコさんがいまほどテレビに出ていない時代のこと。人となりを紹介するのに度々話題にされたのが豪快なTKG(卵かけごはん)だった。

 炊飯ジャー内のごはんに生卵5個と岩のりを適量入れて、しゃもじで混ぜ、炊飯器から直に食べるというもの。あの「嵐にしやがれ」(日本テレビ系)でも紹介されていたのを覚えている。

 その日本テレビやテレビ朝日に出入りしている番組スタッフらがFacebookやインスタグラムで「基之米」の画像をアップする季節が今年もやってきた。

 なかには、「さんまのまんま」(フジテレビ系)のプロデューサーに名を連ねる岩見ゆう子さんのように、稲刈りを「今年も手伝ってきた」と画像を紹介している人までいる。

「基之米」の原品種は長野県産コシヒカリ。生産者は吉田基之さんといって、視聴率20%超えの人気バラエティー番組の演出を数多く手掛けていた名ディレクターなのである。

 
 スタッフや出演者から「基之さん」と呼ばれ、親しまれていた彼が信州諏訪の“婿養子さん”となって農業を始めてから、もう10年がたとうとしている。

 昼夜の気温差がある恵まれた八ケ岳の山麓で、ミネラル豊富な水に育てられ、「まるで高原野菜のようにおいしく育った」「基之米」。農薬や化学肥料を一切使用せずに栽培された特選米は、「虫が付きやすいので、冷蔵庫での保存がオススメ」だという。

 ディレクター時代と同様、真面目で熱い男である基之さんが「挑戦と失敗を繰り返し、方向性を探りながら、ようやく完成した自信作」である「基之米」には、毎年少しずつテレビスタッフのファンが増えているのだ。

 さらに、そのスタッフらが「出演者にも贈りたい」と注文してくるので、私が知る限り、過去には、島田紳助さんやタモリさん、明石家さんまさんの元にも届いていた年があった。

 さらには、基之さん本人が番組で関わっていたり交流があったりした人気弁護士やメーキャップアーティストも「基之米」ファン。

 江戸時代、信州諏訪のお殿様への御膳米を作る村だった長野県米沢の「基之米」。要注目な流行りモノだ。

週刊朝日 2016年12月2日号

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山田美保子

山田美保子

山田美保子(やまだ・みほこ)/1957年生まれ。放送作家。コラムニスト。「踊る!さんま御殿!!」などテレビ番組の構成や雑誌の連載多数。TBS系「サンデー・ジャポン」などのコメンテーターやマーケティングアドバイザーも務める

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