11月4日、奈良県の山中を捜索する大阪府警の捜査員 (c)朝日新聞社
11月4日、奈良県の山中を捜索する大阪府警の捜査員 (c)朝日新聞社

 11月15日、大阪府千早赤阪村の山中で、堺市北区に住民票があり、行方不明になっていた梶本樹李(たつき)ちゃん(4)とみられる遺体が見つかった。傷害致死容疑で再逮捕された父親の梶本卓容疑者(35)の供述から、事件は大きな局面を迎えている。

 卓容疑者は暴行を加え殺害したことは認めたが、遺体は海に捨てた、奈良県の崖から投げ捨てたなどと供述を変えた。そのたびに大規模な捜索が行われ、ようやく、山中に埋めたことを認めた。

「今度こそ本当だ信じてくれと供述し、うそを繰り返す。前の事件ですっかり取り調べに慣れ、警察の手の内も見透かし、楽しんでいる感じ」(捜査関係者)

「前の事件」とは2012年春にさかのぼる。大阪府富田林市在住の9歳の男児が行方不明だとわかり、捜索が行われた。そのとき、男児の祖父母とともに逮捕されたおじとおばが今回の卓容疑者と妻の千穂容疑者(32)=保護責任者遺棄致死容疑で再逮捕=だ。

 大阪府警は同市内の河川敷に埋めたという証言をもとに10カ月にわたり、極秘で捜査したが、男児は発見されなかった。卓容疑者と千穂容疑者は祖父母とともに死体遺棄容疑で書類送検されたが、不起訴となった。そのころ、本誌は卓容疑者と千穂容疑者への取材を重ねた。2人の知人は、

「子供が生まれたときはすごくかわいがる。けど夜泣きを始めると『面倒だ』と折檻(せっかん)する。そのうち子供を放置して遊びまわり、ネグレクト状態になる。樹李ちゃんも最初は可愛がったが、すぐに放棄して施設に預けられた。引き取った後、こんな悲劇になった」

 と教えてくれた。

 2人の間に、子供は樹李ちゃんを含め4人。残る3人は育児放棄され、施設で保護されている。樹李ちゃんが生まれたのは12年。大阪府警の捜査と重なる。事件を防ぐことはできなかったのだろうか?

※週刊朝日 2016年12月2日号