小池知事は衆院議員時代から統合型リゾート(IR)推進の立場を表明し、IR議連のメンバーに名を連ねていた。カジノを合法化する「IR法案」が今国会で審議入りの可能性が高まっていることで、いっそう知事が前のめりになっているというのだ。

「豊洲移転には土壌汚染対策費も含めてすでに約6千億円もの膨大な費用がつぎ込まれています。市場会計保有資金は約1350億円しかなく、市場跡地の売却収入を当てにするしかありません。跡地が売却できなければ、都に11カ所ある中央卸売市場すべてが危機に瀕する。ですから、これまで以上に誘致に熱心にならざるを得ない。五輪とは別に、政策企画局と港湾局が本腰を入れて調査に乗り出しているようです」(都庁関係者)

 IRに詳しい大阪商業大学アミューズメント産業研究所所長の美原融教授が解説する。

「米ラスベガスやシンガポールで展開するIR大手のCEOは、東京でのマネジメントに1兆円の投資を公言しているほどです。IR全体で雇用もおよそ1万人を見込めます。東京五輪後の景気浮揚の起爆剤になることは間違いありません。東京でのカジノ誘致は、お台場が早くから候補に挙がっていましたが、理想的なのは銀座から近く利便性がいい築地市場跡地です」

 だが、豊洲の地下空間からベンゼンやヒ素など有害物質が検出されたことで、築地市場の移転を疑問視する声も多い。都の専門委員を務める建築エコノミストの森山高至氏はこう言う。

「豊洲は市場にするのは問題ですが、レジャー施設ならば許容の範囲だと思う。交通アクセスを充実化させて、IRを豊洲に誘致するのも選択肢の一つになるのではないでしょうか」

 いずれにせよ、そう遠からず、小池知事が「カジノ解禁」という禁じ手を使う日が来るかもしれない。(本誌・上田耕司、亀井洋志)

週刊朝日 2016年12月2日号