「ロシアはIS掃討を名目にシリア空爆もし、シリア沖の地中海に空母も出しています。米国も入る北大西洋条約機構(NATO)に加盟したバルト3国では、民兵組織もロシア占領を前提に訓練をするほど一触即発の状態。米国にとっては、中東と西欧から引くに引けない状況なのです」(前出の奥山氏)

 つまり、東アジアを押さえるには日本は重要だが、西欧、中東、東アジアの3地域の脅威の順位が変わってしまったのだ。米国にとって悩ましいのが、戦後は世界のGDPの5割以上を占めていたが、現在は2割ほどに低下。さらに、軍事面での歳出も陸海空軍にとどまらず、宇宙やサイバー空間と範囲が拡大。財布は一つ。限られた資金をどこに振り分けるかが問題なのだ。

 国際政治学者で『最強兵器としての地政学』(ハート出版)の著者の藤井厳喜氏は「NATOも日米安保も米国が第2次大戦後、最も力があるときに作った枠組み。トランプ氏の主張はつまり、われわれはもうこの仕組みを維持するだけの経済力がない、ない袖は振れないと言っているんです」と語る。

 となれば、トランプ政権以降の日本は、自国の防衛に関して、米国から判断を迫られる可能性が高い。

「現在、在日米軍は4万人規模ですが、5~10年かけて最終的には1万人規模に変わる可能性もあるのでは。急激に勢力均衡が崩れれば、中国がこれまで以上に出てくる可能性もある」(藤井氏)

 最悪のシナリオとして、南シナ海が中国の「領海」となることも考えられる。藤井氏によると、東シナ海は浅く、原子力潜水艦が潜伏する基地とはなり得ないが、南シナ海には十分な深度がある。公海なら、空から原潜の存在は確認できるが、領海になれば話は別。長期間、深く潜航し、数や動きの把握が困難になる。

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