G20首脳会議に出席した際の中国の習近平主席、ロシアのプーチン大統領など各国の首脳ら (c)朝日新聞社
G20首脳会議に出席した際の中国の習近平主席、ロシアのプーチン大統領など各国の首脳ら (c)朝日新聞社

 次期米大統領に決まったドナルド・トランプ氏。安倍晋三首相との会談も和やかに進んだ様子で、選挙中の過激な発言から広がったさまざまな懸念が、払拭されつつある。だが、安心してはいけない。まだ、トランプ政権は始まってもいないのだ。

「(トランプ氏は)信頼できる指導者だ」

 米大統領選挙の熱も冷めない11月18日(日本時間)、安倍晋三首相はトランプ氏のもとへとはせ参じた。会談後の会見で安倍首相は、トランプ氏との相性の良さを演出。会談の詳しい内容は非公開だが、日米同盟に精通した元国防情報局長のマイケル・フリン氏も同席した。この日の東京株式市場は、円安を好感して一時1万8千円台とまるでご祝儀相場だった。

 日米同盟を基軸とするニッポンの防衛は、トランプ政権でも安泰なのか──。

「いま、日本を含む東アジアに対し、米国の関心は薄いといえるでしょう」

 楽観ムードを吹き飛ばすような厳しい分析をしているのは、国際地政学研究所上席研究員の奥山真司氏だ。トランプ政権以前に、米国の軍事戦略が転換し始めているのだという。

「中国が南シナ海の公海で進める埋め立てはアジア諸国にとっては脅威ですが、米国が最も恐れているのはロシア。南シナ海の脅威は低いとの認識です」

 奥山氏は続ける。

「現在の米国の戦略観では、日本に『南シナ海は自分で何とかしろ』と言いだしかねません。日本の防衛費は対GDP比で約1%。一方で先進国の多くは2%前後。同じレベルを求めてくることもあり得ます」

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