室井佑月「この方、ヤバいのではないか?」
連載「しがみつく女」
4日に発効された「パリ協定」。国際社会は「低炭素」から「脱炭素」に切り替わった。多くの国が地球温暖化を防ごうと、190カ国以上が参加、温暖化対策にこれまで消極的だった米国や中国さえ同意した。
だが、日本はほかの国とすっきり足並みを揃えられなかった。TPPの国内審議が大変で乗り遅れたと書いてあった新聞があるけど、そういうことじゃないだろう(てか、TPPを強硬に推し進めるのも意味不明)。
なんでもいいから安い電力が欲しいこの国の経済界に逆らう気もないし、首相もおなじ考え方なのかもしれない。途上国に金をばらまき、悦に入る。その金、税金なんですが……。自分だけが良い目をみればいい。
それと、馬鹿のひとつ覚えみたいに原発依存をやめないし。世界は地球環境のため、再生可能な自然エネルギーへシフトしていっているというのに、この国は莫大な国費を原発につぎ込んで後戻りできないでいる。
自分さえよければ、金さえ儲かれば……そういう考えで、首相がよく言う「(世界で)リーダーシップ」を発揮できる国になれるのかしら?
核兵器を法的に禁止する国連の「核兵器禁止条約」交渉開始決議にも反対したしな。123カ国が、勇気を持って賛成したのに。
この国は唯一の戦争の被爆国なのだから、こういうところでリーダーシップを発揮せずしてどうする? 核兵器がない世界を目指そうと、声高に訴えるべきじゃん。ほかの非核保有国からは、とんだ裏切り者に見えただろう。一国民として、恥ずかしくてならない。
※週刊朝日 2016年11月25日号
室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中