北原みのり「朴大統領が手にした権力とは」 (2/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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北原みのり「朴大統領が手にした権力とは」

連載「ニッポン スッポンポンNEO」

北原みのり「朴大統領が手にした権力とは」(※写真はイメージ)

北原みのり「朴大統領が手にした権力とは」(※写真はイメージ)

 来日したフィリピンのエステリータ・ディさんの話が忘れられない。1944年、日本軍がトラックにフィリピン人男性をぎっしり乗せ、広場にやってきた。ゲリラと見なされた男たちは、その場で首を切られ殺された。追い詰められていた日本軍の狂気は留まるところを知らなかった。彼女は物陰に隠れていたが軍人に見つかり、髪の毛を引っ張られ慰安所に連れていかれた。抵抗したら両耳を掴まれ頭を打ち付けられ気を失った。14歳だった。

 70年以上前の話だ。それでも、その体験を話すのに、どれだけの苦痛を伴うだろう。彼女が声をあげたのは、91年に韓国の女性が声をあげ、それに呼応し多くの女性たちが「私たちは一人ではない」と日本政府に正義を求め始めたからだ。四半世紀の闘いを経て、あの「合意」後、女たちの声はさらに大きくなっている。そのことを、私たちは真摯に受け止めなくてはいけない。

 朴大統領に、被害女性たちの声は届かなかった。

 約40年前の8月15日、朝鮮にとっての独立記念日に、日本の交番で盗まれた拳銃で父親が狙われ、その混乱の中、流れ弾で母親が亡くなった朴大統領。孤独と不信の人生のなか、莫大な富と血みどろの権力を手にした父親と同じ場所に立った彼女に、権力の座はどのように見えていたのだろう。なぜ、そこに座りたいと思ったのだろう。女として、「慰安婦」女性たちをどのように見ていたのだろう。

 朴大統領が招いた混乱が、これ以上「慰安婦」女性たちを苦しめないように何ができるだろう。自分たちが選ぶ政治家に自分たちの首を絞められるような経験を、これ以上しないために。韓国の人々と共に考えたい。

週刊朝日  2016年11月25日号


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北原みのり

北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。作家、女性のためのセックスグッズショップ「ラブピースクラブ」代表

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