「就任までは“ハネムーン”期間。勝利演説の会場に共和党主流派の姿が見えず、党内の亀裂を象徴している。就任後はお約束を実行するにも混沌とするはず。そうなれば明日の飯が食えることを期待して投票した貧困層が真っ先に不満の声をあげるでしょう」

 豊島氏は、トランプ氏が演説で打ち出した政策の実現性にも疑問符をつける。

「大規模減税、インフラ投資も財源の根拠が示されていない。実現のため米国が借金をし始めれば、ドル安、つまり円高になります」

 さらに世界を見渡せば、年末以降、オランダ総選挙や仏大統領選など欧州各地で極右政党が台頭する選挙が予定されている。仏大統領選は極右・国民戦線のルペン氏が有力視され、大統領になれば欧州連合(EU)離脱は必至。投資マネーが逃げ込むのは日本円だ。日本企業の業績は株高円安に支えられてきたので、超円高にでもなれば、アベノミクスの足を引っ張るどころか不況、さらなるデフレへと逆回転を起こしかねない。

 加えて安倍政権の成長戦略に打撃を与えそうなのが、環太平洋経済連携協定(TPP)の行く末だ。米上院は早々とオバマ政権下での採決延期を決定した。

「TPPはもう無理でしょう。米国の方向性は保護主義。日本企業の輸出は難しくなる」

 と経済アナリストの中原圭介氏は話す。第一生命経済研究所首席エコノミストの永濱利廣氏は、こう解説する。

「安倍政権の成長戦略はTPPをてこに規制改革、構造改革を進める内容。米が脱退なら、それも白紙同然になる可能性があります」

 一方、トランプ勝利の報にほくそ笑む面々もいる。前出の豊島氏は言う。

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