ミッツ・マングローブ「仕事人・矢野顕子の日本征服論」 (2/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

AERA dot.

ミッツ・マングローブ「仕事人・矢野顕子の日本征服論」

連載「アイドルを性せ!」

このエントリーをはてなブックマークに追加
矢野顕子さんは「目の前の敵を、ピアノと声だけを武器に、悠然と且つ黙々と片付けていく仕事人のよう」とミッツさん (※写真はイメージ)

矢野顕子さんは「目の前の敵を、ピアノと声だけを武器に、悠然と且つ黙々と片付けていく仕事人のよう」とミッツさん (※写真はイメージ)

 ただ見方を変えると、気持ち良さげに唄っていたキムタクを、「ちょっとそこの素人さん、どいて。アハン♪」と、手ぶらで来た矢野さんが即興でコンサートを始めてしまったかのような、薄ら怖さもあったりなかったり。例えば『ミュージックフェア』で、持ち歌を一生懸命に唄う歌手の背後から、いとも簡単に超自己流でかっさらって行くような。そして、散々最後まで唄いきり、もはや原形を止めないくらいにした挙句、「もう要らなぁい。ウフン♪」と突き返すような。ということは、再度キムタクの登場もあるかもしれません。なんと壮絶なシナリオ。タマホームさんよ、何故そこまで彼を追い詰める? ぞくぞくするじゃないですか。センスないなんて言ってごめんなさい。

 思えばトヨタのCMでも、キムタクが「丘を~越え~て~行こうよ♪」と唄っていた最後に登場していた矢野さん。ユーミンやみゆきさんのようなカリスマとも違う、常に「偶然通りかかっただけよ♪」的スタンスを変えることなく、その存在を貫いています。まるで目の前の敵を、ピアノと声だけを武器に、悠然と且つ黙々と片付けていく仕事人のようです。学生の頃、何度か彼女のコンサートへ足を運びましたが、工藤静香も真っ青の、情と怨と才に満ちた生アッコちゃんの歌と演奏に、引きつけを起こしそうになったのを思い出します。それにしても、あの人のお茶の子さいさいな鼻歌風情に対抗できる歌手などいるのでしょうか。玉置浩二くらいしか思い浮かびません。職人肌・芸術家肌でありながら、実は誰よりも器用で軽やかな大物・矢野顕子。日本征服まであと少し。キムタクをお暇(いとま)させた次は、さし急ぎ『ペンパイナッポーアッポーペン』を、2分弱で片付けると意気込んでいるとか。

週刊朝日 2016年11月11日号


トップにもどる 週刊朝日記事一覧

ミッツ・マングローブ

ミッツ・マングローブ/1975年、横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後、英国留学を経て2000年にドラァグクイーンとしてデビュー。現在「スポーツ酒場~語り亭~」「5時に夢中!」などのテレビ番組に出演中。音楽ユニット「星屑スキャット」としても活動する

おすすめの記事おすすめの記事
関連記事関連記事

あわせて読みたい あわせて読みたい