騒がしいほどの電子音。近所迷惑が気になって寝てはいられない。寝ぼけながら本体を振ってみたが、

「あれ?」

 いくら振っても止まらず、焦る。「しっかりと垂直に振らないと止まらない」(Cerevo広報担当)という説明を思い出し、もう一度、強く振ると、ようやく止まった。ストラップがついているので、カーテンレールにかけておけば、朝日を浴びながらアラームを消せる。間違いなく目が覚めるのではないか。

 商品化はまだ先だが、ユニークな目覚まし時計もある。今年8月に、家電製品の企画や設計を手がけるnankaから発表された「JIKKALARM(ジッカラーム)」だ。名前の由来は、「実家」+「アラーム」。

 アラームを作動すると、「トントントントントン」と、包丁がまな板をたたく音が聞こえ、ほのかにみそ汁の香りが漂ってきた。実家の母親が朝食の準備をしているイメージだそうだ。

 開発者の宗野裕一さん(32)は狙いをこう語る。

「包丁の音で徐々に覚醒して、超音波振動で発生させるみそ汁の香りで、食欲を刺激し、目覚めさせる。睡眠欲に勝てるのは、性欲を除けば、食欲だと考えたんです。起きる意欲がかき立てられますよ」

 光を検知するセンサーが搭載され、アラームを止めるためには、光を当てないといけない。太陽の光であれば、朝日を浴びたい私の希望がかなうことになる!

「脳が覚醒して、確実に目が覚めますよ」(宗野さん)

 音だけではなく、視覚と嗅覚(きゅうかく)まで刺激を与えることを意図して作られた目覚ましアラーム。ターゲットは、「実家を離れて一人暮らしなどで疲れている男性諸君」(同)だという。

 nankaの技術者は、平日はサラリーマン。疲れている日々を送るからこそ、製品のアイデアが生まれたとか。ちなみに、包丁の音には、新妻モードが搭載されており、「トントン、トン、トン」と、やや不慣れな包丁音を再現している。

「技術的な課題はクリアしています。新生活が始まる来年春ごろには商品化したい」と宗野さん。

 習慣とは恐ろしいもので、朝型生活の“ツボ”を得ると、夜更かしの機会もグッと減り、朝が楽になった。社会的時差ボケから抜け出す日も近い?

週刊朝日  2016年11月18日号