食品売り場にやってきた近くの男性(78)は閉店方針に、

「寂しいよね。毎日食材買いに来ているよ。店員とも顔見知り。声をかけてくれるのもうれしいから」

 と話し、こう続けた。

「上の階は行かない。以前にバンド(ベルト)を1千円ほどで買ったがすぐに壊れた。昔ここで買ったステテコは丈夫だったけど。だから地下の食料品売り場しか行かない」

 競争激化も影を落とす。千葉県のJR柏駅東口前。9月末で灯が消えた「そごう柏店」は最上階の14階に回転展望レストランもあるおしゃれな構造。だが今では11階のカルチャースクールだけが営業中だ。

 そばに実家があるというパート女性(47)は言う。

「まさか閉店とは。でも10年以上前から衣料品フロアとか、お客が少なかった。西口の高島屋が若者や富裕層を取り込む店づくりをして、周辺にショッピングセンター(SC)もできたから、お客が移っていったよね」

 05年につくばエクスプレスが開業し、追い風を受ける柏市では沿線開発が活発化。人口も10月1日現在で前月比210人増の41万7394人と増加基調だ。小売りには朗報のはず。だが人口増加を見込んで次々と大型SCが進出。百貨店の閉店ドミノの背中を押した。

 かつて柏の大型小売店といえば、駅前に陣取る高島屋、そごう、丸井だった。ところがつくばエクスプレス開業にあわせてモラージュ柏(04年開店、売り場面積2.4万平方メートル)、イオン柏ショッピングセンター(06年、2.49万平方メートル)=現イオンモール柏、ららぽーと柏の葉(06年、2.66万平方メートル)などの複合商業施設が参入。今年4月にはセブンパークアリオ柏(6.5万平方メートル)もオープンし、巨大ショッピングモールの渦が旧型の大型店をのみ込む勢いで広がっているのだ。

週刊朝日 2016年11月11日号より抜粋