前出の梶田医師はパソコンで仕事をする人であれば、30代半ばを過ぎたころからこの累進屈折力レンズを使うことを推奨する。

「遠近というと老眼鏡のイメージがありますが、今のレンズは境目がなく、単焦点レンズと見た目は変わりません。老視のごく初期から使うことで、自覚症状の感じ方もゆっくりになり、何より目が疲れません。体への負担も軽くなります」(梶田医師)

 最近では累進屈折力レンズを用いた遠近両用コンタクトレンズも登場。遠くを見る度数が外側に、近くを見る度数が中央にあり、1枚のレンズで複数のピントを確保できる。

 過去に発売された初期の製品は見えにくいという指摘も多く、装着を諦める人も多かったが、今の製品の性能はかなり向上している。例えば、ジョンソン・エンド・ジョンソンのワンデーアキュビュー モイスト マルチフォーカルは瞳孔径に着目してデザインした、使い捨てタイプの遠近両用コンタクトだ。

「瞳孔の大きさに合ったレンズでないと、レンズの度数部分が瞳孔からはみ出るなどして、遠くもしくは近くが見えにくくなることがあります。そこでその方の瞳孔径に近いレンズをセミカスタマイズで用意し、見えにくさを解消しました」(ビジョンケアカンパニーの西野元気氏)

 眼鏡についても、短時間で格安な商品を提供する眼鏡店が人気の一方で、レンズの機能が向上し、完全オーダーメイドで作るものもできてきた。めがね技術コンサルタントの内田豪氏は「正確に視力をみて、希望を聞いて、適正な眼鏡を作るためには、それなりに時間はかかる」という。

「レンズを選ぶだけでなく、本当に自分に合っているか、試し掛けをする時間も必要です。また累進屈折力レンズの場合、度数がレンズの場所によって異なるため、その方の視線の位置まで厳密に測って、顔の左右差まで考えて調整しなければなりません」(内田氏)

 公益社団法人日本眼鏡技術者協会では技術者の質の向上を目指し、適切な視力測定やレンズの選択、フィッティングなど眼鏡調整に必要な技術を備えた人に認定眼鏡士という資格を与えている。有資格者は全国に7千人あまり。眼鏡を作るときの参考になるだろう。

週刊朝日 2016年11月4日号