「生前退位」は天皇制の終わりの始まり…(※イメージ)
「生前退位」は天皇制の終わりの始まり…(※イメージ)

 警察官僚出身で、自民党で政調会長や閣僚を歴任した亀井静香衆院議員が、天皇の「生前退位」について語る。

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 今回の「生前退位」ですが、率直に言って、陛下はお立場上おっしゃってはならなかったと思います。

 お気の毒ですが、陛下には基本的人権、言論の自由、選挙権がおありにならない。日本の皇族とはそうした存在で、外国の王族とは違う。日本では歴史上、世俗の権力を握った者が天皇の権威を借りようと「玉」の取り合いをやってきた。自らの意思での退位や即位を許容したら、世俗の権力に利用される余地をつくってしまう。一代限りの特措法でも先例をつくったら、「また同じ法律をつくればいい」となる。そうなれば日本の天皇制は根底から揺らぎ、終わりの始まりになります。

 陛下は生真面目な方だから、災害被災地の慰問などができなくなると象徴の務めを果たせなくなるから退位するしかないと、自分を追いつめてしまっている。そうした活動は宮内庁主導で大幅に削減し、国事行為と宮中祭祀に専念していただくしかない。それでも難しいとなれば、現行制度にある皇太子による国事行為の代行や、摂政を置くなどの手段を使う。政府としてとり得る手段は、これしかありません。

 陛下は摂政を置くことを否定する趣旨のご発言をされているが、憲法で国政に関する権能を有しないと定められており、摂政を拒否する権限もないのが現実です。

「陛下がおっしゃるんだから、そのとおりにして差し上げればいい」と言うのは簡単ですが、そう単純な問題ではないのです。誰も言わないから、私は申し上げているんです。(聞き手 本誌・森下香枝)

週刊朝日  2016年11月4日号