東尾修「『黒田シリーズ』のドラマ性」 (2/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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東尾修「『黒田シリーズ』のドラマ性」

連載「ときどきビーンボール」

週刊朝日#東尾修
引退表明で「最高のシーズン、悔いはない」と語った広島の黒田博樹投手=10月18日 (c)朝日新聞社

引退表明で「最高のシーズン、悔いはない」と語った広島の黒田博樹投手=10月18日 (c)朝日新聞社

 私の世代が現役を引退した1980~90年代は、まだ「辞める」イコール「クビ」や「戦力外」といった要素が強かった。私が現役引退を決めたのは88年の中日との日本シリーズ中だった。先発ローテーションから外れた私は第1戦(ナゴヤ球場)で、4−1で迎えた八回無死一、二塁、打者・彦野利勝の場面で先発の渡辺久信をリリーフ。当然、最後まで投げ切るつもりでマウンドに上がったが、当時の森祇晶監督の言葉は「この1人を抑えてくれ」だった。結局、九回まで投げ切ったが、その言葉は私の心に強く残った。その日の夜、知人に引退の意思を伝えたが、公表はすべてが終わってからだった。

 今でも一握りの選手かもしれないが、球団、仲間、そしてファンから「お疲れ様」といってもらえるのは野球人として最高の幸せものだ。球団の功労者に対する意識も変わったといえる。以前なら40歳近くなれば、必ずクビがちらついていたが、今では選手の現役続行への意思をくんでくれ、辞めどきもファンのことを考えてくれるようになった。

 話を戻すが、今回の日本シリーズは「黒田シリーズ」といっても過言ではない。相手は日本ハム。日本最速の165キロを出したスーパースター大谷翔平が相手にいる。広島にとっては84年以来、32年ぶりの日本一がかかる。こんなドラマ性を帯びた日本シリーズはそんなにない。そして、日本シリーズの主力先発投手として現役最後のマウンドに立てる投手も聞いたことがない。歴史的なシリーズになる。私も目に焼き付けたい。

週刊朝日  2016年11月4日号


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東尾修

東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝。

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