ミッツ・マングローブ「宇多田ヒカル復帰とあの女の消息」 (2/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

AERA dot.

ミッツ・マングローブ「宇多田ヒカル復帰とあの女の消息」

連載「アイドルを性せ!」

このエントリーをはてなブックマークに追加
宇多田ヒカルとほぼ同期に脚光を浴びたあの女性歌手は今? (※写真はイメージ)

宇多田ヒカルとほぼ同期に脚光を浴びたあの女性歌手は今? (※写真はイメージ)

 さて、そんな宇多田さんを想う時、必ずセットで思い出すのが、倉木麻衣さんです。私は倉木さんが醸す「大人に翻弄される歯痒さ」も好きでした。今や私も「マツコの二番煎じ」と揶揄(やゆ)される立場として、彼女ほど明白な打ち出し方で、あれほどの成功を収めたというのは、むしろとんでもない偉業だったのではと思うのです。今一度、彼女のデビュー曲「Love, Day After Tomorrow」のPVを観て頂きたい。すでに成功例があって、需要が有り余っているところに飛びつかないのは、資本主義ではありません。倉木さんの場合は、本家・宇多田以上に実存が曖昧で、性(さが)や業が丸出しな宇多田さんに相対して、ほとんど意思や感情や体温が感じられないという点で、宇多田よりも「商品」として成立し易かったのかもしれません。しかし、その単なるオトナのプロダクトに徹せざるを得なかった倉木さんの戸惑いと図太さと信念こそが、彼女の深い性(さが)だったのだと、20年近くの年月を経て感じ入る今日この頃です。なんと愛おしい!

 ここ数年、アルバムのリリースが途絶えている倉木さん。忘れられないのは、2005年の紅白歌合戦に出場された時、対戦相手が美川憲一さんだったことです。大晦日の幻として処理されたような身の毛もよだつ組み合わせでした。倉木さんこそ、人間活動をなさっているのかもしれません。

週刊朝日  2016年10月14日号


トップにもどる 週刊朝日記事一覧

ミッツ・マングローブ

ミッツ・マングローブ/1975年、横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後、英国留学を経て2000年にドラァグクイーンとしてデビュー。現在「スポーツ酒場~語り亭~」「5時に夢中!」などのテレビ番組に出演中。音楽ユニット「星屑スキャット」としても活動する

おすすめの記事おすすめの記事
関連記事関連記事

あわせて読みたい あわせて読みたい