景気停滞でも「転職売り手市場」と言われるワケ

 安倍政権が「働き方」改革に乗り出すという。お上の一声で変わるもんならぜひともバシッとやってもらいたいが、会社世界が見せるツラには表とウラがある。まして人生行く道は自分で選ぶってもんだ。新天地を求め船出するも良し、今いる場所で花咲く“社畜”も良し。さあどうする。

東京都内のとあるオフィスビルから、身長180センチほどの痩身の男性が出てきた。見た目は若いが、年齢は40代という。医療関係の外資系メーカーの正社員で営業を担当。年収は1500万円ある。最近、投資目的で7千万円の不動産も購入した。もとは都内の私立大学を卒業後、国内の大手企業に入社。だが閉塞感に嫌気が差し、人材エージェントの紹介を活用しながら転職を繰り返した。現在の外資系は4社目だ。「転職はイメージが大事。違和感を感じているなら出たほうがいい」。仕事は順調で、今月上旬は欧州出張という。

 華麗な転職で成功を収める人がいる一方で、苦労を重ねる人もいる。同じく都内在住の中沢彰吾さん(60)は東京大学文学部西洋史学科を卒業後、大阪のテレビ局に就職。アナウンサーとしても活躍したが、身内の介護のため1年ほど休職し、2006年にやむなく離職した。一時は正社員に戻ろうとしたが、かなわず断念。現在は人材派遣会社に登録し、ライターと日雇い仕事をしながらの生活。自らの経験を著書『中高年ブラック派遣』(講談社現代新書)にもまとめた。

 年齢もあって日雇いはきつい。そして悔しい。昨春、派遣先の神奈川県内の施設で来訪した学生をガイドする計5日間の仕事といわれ、現地に到着。着くなり派遣先の正社員女性から心ない言葉をかけられた。

「なんでこんな年寄りが……」

 さらに突然の持ち場替え。女性社員からその場で担当を会場裏に集まるゴミの分別作業に変更すると言い渡され、結局、午後6時までゴミ分別を続けた。

 お中元シーズンの7月に派遣されたのは、大手百貨店の商品券売り場。職場では約30人が働いていたが、正社員はバックヤードでお金の管理をする2人だけ。ほかは非正規だった。日雇いでありながらスーツ姿で売り場の苦情対応も任され、ヘトヘトだった。中沢さんは言う。

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