環境基準をわずかに上回る有害物質が検出された豊洲市場。作家の室井佑月氏は、小池都知事の会見に納得できないという。

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 9月30日、小池百合子都知事は、豊洲市場に土壌汚染対策のための盛り土がなかった問題について、

「責任者を特定することは難しい」

 という調査結果を発表した。

「いつ誰が、という点は、ピンポイントで指し示すのは難しい。流れの中で、空気の中で進んでいった」「誰も気づかず、チェックさえなかったという恥ずかしい状況」

 だってさ。でもって、

「今回の事態を招いたのはガバナンス(内部統制)と責任感の欠如」

 であると語った。つまり、小池都知事の調査に関する我々への答えは、「組織に問題があったから、そこにメスを入れ改革するわ」ってもの。なんでも、重要な課題を、部門をまたいで共有する『都庁マネジメント本部』を作ったんだそうだ。

 ふうん。……って納得できるわけないじゃんか!

 これまでの問題とこれからの問題は、まったく別よ。いやいや、これまでの問題をきっちり解決せず、これからの問題について語られてもさ、とあたしは思う。

 築地市場の豊洲移転。どうしても豊洲、築地じゃ駄目なんだから豊洲、テレビなどでそう言っていた識者たちがいる。その人たちは、はじめは豊洲市場の開場が遅れたらどうするんだ、いくら損すると思ってんだ、と鼻息が荒かった。しかし、万全だと言い張っていた土壌汚染対策の嘘などが暴かれ、その発言はトーンダウンしていった。

 その人たちは今、豊洲は市場以外で利用すればいい、というようなことを言っている。ひょっとして、世の中の流れをそういう風に持っていこうとしてる?

 おかしくね? 莫大な税金を投入している事業なのに、「してしまったことをいまさら言ってもしょうがないんだから」って、小学生を持つ親が、子を叱るみたいな発想だ。しかも、ふつうはその後、親は子につづけるもんだ。「もう二度としませんと、謝ってこい!」って。

 
 馬鹿みたいに無駄な税金を使われたのに、きちんと謝ってもらってないんですけど。一応、頭を下げた人もいる。けど、自分のせいじゃないと逃げてからの謝罪だった。なんだよ、それ。我々の大事な血税を扱う人たちに、小学生程度の道徳心を求めるのも叶わないってか?

 小池さんは9月30日の会見で、

「(今回の調査結果について)一定の評価はするが不十分」

 と、この先も調べはつづけるみたいなことをいっていた。

 でも、この人、

「(盛り土がなかったという)問題は安全性とは別だ」

 なんてことも言っている。

 地下水から有害物質が出てきたのにさ。やっぱり、小池さんも臭い物には蓋をするタイプなの?

「これが無駄金ばかり使う臭さの元でした。取り除くから、もう安心」

 って、それをやって欲しいのに。

週刊朝日  2016年10月21日号

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室井佑月

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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