春風亭一之輔が「完全に病んでいる」と思ったこと (2/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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春風亭一之輔が「完全に病んでいる」と思ったこと

連載「ああ、それ私よく知ってます。」

「胡蝶蘭だーっ!」(※イメージ)

「胡蝶蘭だーっ!」(※イメージ)

 などと曇った顔でダメ出ししてたのに、順番が回ってくると、

「超絶ヤバかったですっ!」

 と二人で手足をばたつかせていた。なんだ、そりゃ。そんなバカ女のお世辞に喜んで、

「打ち上げおいでよー」

 なんてニヤついているあんたもあんただよっ。そんなんだから、芝居もつまらないんだよ。あんなもんで6千円もとりやがって! いや、俺は招待だけどさっ!……と、喉元まで出たそんな言葉をのみ込んで、

「ありがとうございました」

 とだけささやいて帰ってきた。

 帰り道、ぼんやり考えた。

「……私の独演会で褒めて帰っていく人も信用出来ないのか」

 そういえば入門したての頃、師匠や先輩に言われた。

「褒めてくる人の話は話半分に聞いておけ」「過剰な褒め言葉はワナだと思え」等々。
 結果、歪んだ人間が出来上がってしまった。褒めるのは苦手だが、褒められるのもうがってしまう。持ち上げるのも、上げられるのも決まりが悪い。

 終演後の挨拶は、

「今日はいい天気でよかったね」

「ええ、お互いに」

「じゃ、また!」

 くらいでちょうどいいや。

週刊朝日  2016年10月14日号


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春風亭一之輔

春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/1978年、千葉県生まれ。落語家。2001年、日本大学芸術学部卒業後、春風亭一朝に入門。この連載をまとめた最新エッセイ集『まくらが来りて笛を吹く』が、絶賛発売中

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