新潟県妙高市で市から指導を受けた空き家(2016年5月撮影) (c)朝日新聞社
新潟県妙高市で市から指導を受けた空き家(2016年5月撮影) (c)朝日新聞社

 今年6月、野村総合研究所(NRI)が「2033年、約3軒に1軒が空き家になる」と衝撃的な予測を発表した。親が住んでいた実家や、苦心して買ったマイホームも家余りの時代に突入し、放置すれば、リスクに変わる可能性も。空き家の処分、活用の方策を探った。

 実家の処分は「お金」が絡むだけに、兄弟姉妹、親族などの人間関係にダメージを与えることもある。

「もう思い出したくもありません」

 そう語るのは、実家が中国地方にある東京都内在住の60代男性Cさん。2人の姉がいる。

「父が28年前に亡くなり、母が18年前に亡くなりました。そのときに東京に住んでいる一番上の姉がどういうわけか、『家屋も金融資産も全部、私に譲ってちょうだい』と主張。私は小さいころ、父から自分(Cさん)が継ぐために家を建てたと聞いてました。ただ、私が結婚するときに両親が『東京に行くんだったら、お前とは親子の縁を切る』と言っていた。姉はそれに目をつけ、執拗に権利を主張しました」

 実家の資産価値を調べてみたら驚いた。数億円の価値があったからだ。

「私は生活に困るほどではないので、まあいいかなと思っていたんですが、姉と4年半にわたる法廷闘争を繰り広げました。姉は法廷で泣きながら、9対1の相続権を求めてきた。アホらしい争いと思いつつも、最終的には、姉6、私4の配分で結審しました。もうほとほと疲れ果て、姉とは一生会うつもりはありません。お金は魔物です」(Cさん)

 自身の生活設計に影響する場合もあるから悩ましい。生活保護を受けながら、都内のアパートに住む70代女性のDさん。都内一等地の一戸建てに住んでいた叔父が亡くなった。叔父の子ども、きょうだいも亡くなっていたことから、相続の権利がDさんに回ってきたという。駅前の住宅で、1億円相当の物件だった。

「固定資産税、都市計画税などで年間50万円かかると言われました。住宅を売れば、生活保護を2年間さかのぼって返さなければならず、生活保護の支給も打ち切られる。最終的に区役所に寄付しました」

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