三田会の中でも規模が大きいのが社内三田会だ。多くは年に1、2回の親睦会があり、同じ会社の塾出身役員から新入社員までが一堂に会す。人数が多いゆえに「社内の付き合いがあるので顔は出す」「正直少しめんどくさい。でも出張サービスの銀座久兵衛のすしが食べられるのが楽しみ」(いずれも大手商社勤務、40代)と、付き合い程度に参加する塾員も少なくない。

 しかし、一気に三田会活動に熱心になるきっかけがある。海外赴任だ。世界の主な都市には現地三田会がある。

「現地法人を相手にしているので、日本人の仲間ができるのはホッとする」。そう話すマレーシア赴任中のメガバンク行員(40代)は、海外に出て初めて三田会の強い連帯感を知ったという。早慶ゴルフコンペなど早稲田OBとの交流も盛んで「勝って応援歌『若き血』を歌うとすごく気持ちいい」と笑う。

 仕事面でメリットがあることも。ドバイ駐在経験のある元電機メーカー社員(40代)は、「中東ではコネクションやインサイダー情報で商売の成否が決まる。信頼できる情報や人脈を紹介してもらい助かった」と振り返る。帰国後は帰国者が集う三田会に参加し、親睦関係は続いていく。

 情報や人脈がモノを言うのは、若い企業ならなおさらだ。経営者同士のネットワーキングを目的に集まる「ベンチャー三田会」。「Travel.jp」など旅行サイトを運営するベンチャーリパブリックCEOの柴田啓さん(50)や、ショッピングサイト「バイマ」を運営するエニグモCEOの須田将啓さん(42)らが09年に立ち上げた。

 現在会員は約200人。年に数回、著名人を招いた親睦会を開催。これまでに新浪剛史・サントリー社長や星野佳路・星野リゾート社長ら塾出身の経営者が講演した。9月の会は、スープストックトーキョーを展開するスマイルズ社長の遠山正道さんが、30代中心の若き経営者たちを前に自らの足跡、仕事観を語った。

 講演後はグラス片手に名刺交換大会。ITからスイーツまで業種はさまざま。ビジネスが生まれることも少なくない。法人向けにポイントサービスのコンサルティングを行うエムズコミュニケイト社長の岡田祐子さん(47)は、この会で顔見知りの社長と再会。翌週には事業提携し、電力自由化市場に参入する企業向けの新サービスをスタートした。

 塾員が集うのは三田会だけではない。帝国ホテルの地下に「東京三田倶楽部」、銀座にはクラブハウス「Blue Red & Blue(BRB)」と、塾員の交流が目的の会員制サロンがある。

週刊朝日  2016年10月7日号より抜粋