ベンチャー三田会のひとこま。名刺交換も笑顔がこぼれ、会話が進む(撮影/写真部・長谷川唯)
ベンチャー三田会のひとこま。名刺交換も笑顔がこぼれ、会話が進む(撮影/写真部・長谷川唯)

 慶應大学にビッグイベント「学園祭」の季節がきた。現役生の祭りではない。卒業生が主体の「慶應連合三田会大会」だ。三田会といえば団体数、結束力、集金力がずば抜けていることで有名だ。

「久しぶり!」「元気だった?」。歩くのもやっとなほど混雑する会場のあちこちで再会を喜ぶ声が上がる。9月2日、東京・新宿のレストランを貸し切り開催された「1992年三田会」の同窓会だ。92年に慶應義塾大を卒業した約300人が集結、旧交を温めていた。

「三田会」とは慶應の卒業生たちの会の総称。在学生を「塾生」、卒業生を「塾員」と呼び、塾員が三田会への入会資格を持つ。塾HPによると、国内800以上、海外70もの三田会が、各三田会を包括する「慶應連合三田会」(以下、連合三田会)に登録している(2016年4月現在)。

 早稲田大にも卒業生が集う「稲門会」があって、同窓会組織「早稲田大学校友会」には1333団体が登録(同6月1日現在)。だが、毎年の学部卒業生数は早稲田は慶應の約1.4倍で、積み重なれば母数が違う。さらに「3人寄れば三田会」と言われ、連合三田会に登録していない三田会は数百にも上るという。

 慶應には実は「大学同窓会」は存在しない。東大を始め六大学の他大学にはいずれも「校友会」があって、会費を募って運営に充てている。連合三田会は、各三田会が横断的につながることを目的に1930年に発足したもの。塾員から会費を徴収することはなく、後に触れる「慶應連合三田会大会」の収益で運営する。

 実は筆者も塾員の端くれ。よく別の大学出身者からこう聞かれる。

「慶應って卒業してもやたら仲がいいよね」「なんでそんなに『つるむ』の?」

 国内はもとより海外にも張り巡らされた三田会ネットワークと、そこで親睦を深める塾員の姿が、世間には「つるむ」と映るのか。

 帝国データバンクの調査では、昨年度の1部上場企業の社長の出身大学ランキングで慶應はトップ。セイコーHDや大正製薬など社長が代々塾出身のオーナー企業も少なくなく、企業の合併や事業提携にも三田会人脈が働いたのでは、といった臆測が飛び交ってきた。ネット上で「三田会はフリーメイソンのような秘密結社」などと書かれることも。確かに塾員限定の三田会は外からは実態が見えにくい。

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