こう話すのは、北里大学東洋医学総合研究所漢方鍼灸治療センター副センター長の伊藤剛医師だ。同医師が推奨するのが、「指圧(ツボ押し)」。即効性を期待する人にオススメだという。

 伊藤医師によると、足のむくみを解消するツボは、<湧泉(ゆうせん)、築賓(ちくひん)、三陰交(さんいんこう)、太谿(たいけい)、崑崙(こんろん)>の五つ。ツボの位置の目安は、指でその辺りを押していくと鈍い痛みを感じるところがある。ここが治療すべき異常なツボで、5秒間強めに押し、それを5回ほど繰り返す。湧泉では、ゴルフボールやソフトボールの上に足をのせてゴロゴロ転がしてもいい。

「押す強さは“気持ちいい”と感じる程度。強く押しすぎると内出血などを起こしたり、痛みが残ったりすることもあるため、注意が必要です。ツボは神経で脊髄や脳につながる感覚受容器(センサー)なので、押すと自律神経などを介して血流が改善され、すぐに足が温かくなるのがわかります」(伊藤医師)

 漢方薬もむくみには有効だ。五苓散(ごれいさん)、八味地黄丸(はちみじおうがん)、牛車腎気丸(ごしゃんじんきがん)、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)などが水滞やお血を解消して体内の水はけをよくする効果・効能がある。ただし、症状や体質などに応じて処方が決まるので、漢方に詳しい医師(漢方専門医)や薬剤師に相談したほうがいいだろう。

【生活習慣の改善】
 生活習慣のちょっとした改善も欠かせない。血管外科医で、国際医療福祉大学三田病院(東京都港区)外科部長の、折口信人医師は「水分摂取」と「弾性ストッキングの適切な使用」を挙げる。

 まず水分摂取だが、意外にも水分を控えてもむくみはとれないという。

「原因は体内にある水分のアンバランスにあるため、水分を控えても足に水がたまりやすい状況は変わりません。水分はしっかりとって、別の方法でむくみをケアすることが大事です」

 利尿薬を使っても、薬は血液中の水分を排出するだけで、血管外にたまっている水分には影響しない。つまり、薬を飲んでも尿量は増えるが、足のむくみがとれるわけではないそうだ。

 弾性ストッキングは、ふくらはぎに圧をかけて静脈の働きを助け、体液がたまるのを防いでくれる。ポイントは、「自分に合ったものを、朝からはく」こと。

「市販されているものより、医療機関で売っているもののほうが、高い圧になっていますが、はくときにコツが必要で、指導を受ける必要があります。まずは市販の弱い圧から始めたほうがいいと思います。キツイ下着やひざサポーターは、血流を妨げて、むくみの原因になります」(折口医師)

 まれだが、むくみを放っておくと、足が赤く腫れて熱感と痛みを伴う蜂窩織炎(ほうかしきえん)を発症し、菌が全身に広がり高熱が出る敗血症を生じることがある。また、むくんで重症化した足の皮膚が壊疽(えそ)を起こし、潰瘍(かいよう)ができることも。

 むくみは日常生活の延長線上に起こる体のトラブルの一つ。ひどくなると外出を控えるなど、QOL(生活の質)の低下にもつながる。「たかがむくみ」と放置せず、できる範囲でセルフケアを行いたいものだ。

週刊朝日  2016年9月30日号より抜粋