はしかのワクチンが足りない!(※イメージ)
はしかのワクチンが足りない!(※イメージ)

 関西国際空港や幕張メッセの周辺で感染者が相次いで確認された麻疹(はしか)。国立感染症研究所の報告によると、9月7日時点での感染者数は82人。感染拡大を防ぐにはワクチン接種が頼りだが、麻疹と風疹の混合ワクチン「MRワクチン」がいま、不足する事態が生じている。

「9月5日から入荷は止まったまま。定期接種の子どもたちの希望さえかなえられない」

 切迫した現状を語るのは、兵庫県尼崎市で開業する小児科医だ。予防接種には、法律に基づいて市区町村が主体で行い、主に公費で賄う「定期接種」と、希望者が自己負担で行う「任意接種」がある。はしかは定期接種で、2006年4月から1歳児と、就学前の1年間の2回接種になった。この小児科医の医療機関では1歳児の分は在庫でかろうじて確保できたが、就学前の子どもは接種を待ってもらっている状況だという。

「尼崎ではどこも困っている。火元に消火器がないのと同じで、早急に何とかしないと全国に広がるおそれもあります」(小児科医)

 ワクチン不足の余波は、ほかの地域にも押し寄せつつある。問い合わせが1日3~4件あるという世田谷等々力内科・小児科・総合診療クリニック。院長の藤本和法医師は言う。

「8月下旬までスムーズに納入されていたが、9月からはまったく入ってこない。4日で在庫が切れました」

 東京都調布市内の小児科クリニックの医師も、「ワクチンが足りないのは事実。任意接種の希望者が増えたらワクチンを緊急輸入するしかない」と打ち明ける。

 これに対し、厚生労働省は9月9日、都道府県宛てに文書で、「(定期接種の分は)全国的な不足は生じない見込み」と通達。本誌の取材でも「不足は生じないとみている」「需要が爆発的に増大すれば問題だが、現時点では感染者は数十人の範囲」(健康局健康課予防接種室)と説明した。

 大流行にはいたっていないのに、なぜ現場にワクチンが行きわたらないのか。日本ワクチン産業協会によると、MRワクチンの国内の生産量は14年が227.5万人分、15年が220.8万人分。2回の定期接種で必要な約200万本は賄えるが、任意接種に使える分はごくわずか。今回のように流行の兆しがみえれば、家族に妊婦がいる人やゼロ歳児など、任意接種を希望する人が急増するのは想像に難くない。

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