9月2日にロシアで会談した安倍首相とプーチン大統領 (c)朝日新聞社
9月2日にロシアで会談した安倍首相とプーチン大統領 (c)朝日新聞社

 永田町で、またも衆院の解散風が吹き始めている。きっかけは、12月15日の日ロ首脳会談の開催決定。安倍晋三首相の地元・山口県で開かれるとあって、北方領土問題の交渉進展を期待する声も多い。外交成果を携え、国民に信を問うシナリオとは。

「(領土問題の)交渉を具体的に進める道筋が見えた」

 安倍首相はロシア・ウラジオストクで2日、プーチン大統領と首脳会談し、こう手応えを強調した。プーチン大統領も「この問題はぜひ解決しなければならない。われわれは決定的な一歩を踏み出す用意がある」と前向きな姿勢を示した。

 そこで関心が高まるのは、12月に山口県長門市で開かれる会談の成果だ。

 日ロの交渉関係筋は「(歯舞、色丹の)2島返還プラスαの一定の成果を明記した共同文書が発表されるだろう」と歴史的な会談になるとの見通しを示す。領土問題に長年かかわり、交渉のキーマンの一人でもある新党大地の鈴木宗男代表は本誌の取材に対し、強気の見方を示す。

「12月15日に何らかの道筋がつけられる。4島一括返還は現実的ではなく、安倍首相も2島返還でいくと言っている。うまくいく。12月には勝負がつく」

 政府は「4島の日本への帰属が確認されれば、返還時期や条件は柔軟に対応する」との立場だ。国後と択捉を含めた4島の一括返還を求めるのが本筋だけに、与党内には「2島返還で手打ちは正直しんどい」(自民党幹部)との声もある。

 ただ、鈴木氏は「ビザなしの自由往来や共同経済活動、残る2島の継続協議などに加え、戦後70年以上住む日本人、ロシア人島民をいかに平等に扱うか。今後の交渉次第だが、安倍首相は何らかのカードを切るはずだ」と進展に向けた秘策があることを示唆する。

 12月の山口県での会談を前に、日ロ首脳は11月にペルーで開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)でも会う予定だ。

 それに先立ち、ロシア経済分野協力担当相を兼ねる世耕弘成経済産業相がモスクワを訪問する意向で、「閣僚間で交渉を行い、首脳会談の最終的な詰めをしたい」という。ロシア側は55項目の経済プロジェクトへの協力を求めている。訪ロ時にはロシアの経済界とも協議を進め、突破口を探る考えだ。

 外務省幹部は日ロの交渉について、こう解説する。

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