「健保金」はボクサーにとって命綱とも呼べる制度。協会の副会長を務める金平桂一郎氏が胸中を語った (※写真はイメージ)
「健保金」はボクサーにとって命綱とも呼べる制度。協会の副会長を務める金平桂一郎氏が胸中を語った (※写真はイメージ)

 日本のボクシング界がいま、混迷を深めている。プロボクサーが試合で負傷した際、その治療費として充てられるのが「健康管理見舞金(健保金)」である。日本ボクシングコミッション(JBC)が、選手のファイトマネーから2~3%徴収して積み立てる互助制度だ。ボクサーの命綱といっても過言ではない。

 ところが、JBCによる健保金の“不正流用”疑惑が浮上し、真相解明を求める日本プロボクシング協会(=全国のジム会長が加盟する団体。以下、協会)とJBCの対立が顕在化している。協会の副会長を務める金平桂一郎氏(協栄ジム会長)が怒りの胸中を語る。

*  *  *
金平:健保金が本来の目的以外に流用されているという疑いが持たれるようになったのは3年ほど前です。JBCの収支計算書などを精査したところ、財務上怪しいという声が協会員の中から上がってきたのです。

 健保金の積立金の残高が一体いくらあるのか、まったくわからない状態になっていたため、JBCに対して再三にわたって説明と情報開示を求めてきました。

――健保金は2008年に一般会計に繰り入れられた。13年の一般財団法人への移行時、健保金制度は保険業法に抵触する可能性があるとして、JBCは治療費などほぼ全額負担していた制度を見直し、支払額の上限を10万円とした。

金平:14年1月、JBCは協会との協議に応じ、健保金の残高が約5900万円あることを確認しました。さらに健保金の専用口座を設け、選手の治療費以外に支出しないことを約束しています。

――JBCでは12年に内紛が起きた。当時の安河内剛事務局長ら4人を解雇し、相次いで地位確認等の労働訴訟に発展した。安河内氏とは最高裁まで争って敗訴。JBC側は慰謝料と未払い分の給与として約2600万円を支払うことになった。金平氏は健保金が裁判費用に流用されたのではないかとの疑念を抱く。

金平:他の3人の職員との和解料も含め、私はおよそ1億円が裁判費用に使われたと見ています。安河内さんが事務局長だったころは、JBCの資産は約1億5千万円ありましたが、現在の財政は逼迫(ひっぱく)しているはずです。それで“聖域”である健保金にまで手をつけたのであれば、近い将来、財政破綻(はたん)に陥る恐れがあります。

――今年6月、金平氏は協会長の渡辺均氏とともにJBCを訪れ、健保金専用口座の残高を示すよう浦谷信彰統括本部長らに迫った。

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