男木島の漁港に集まった猫 (c)朝日新聞社
男木島の漁港に集まった猫 (c)朝日新聞社

 日本は「空前のブーム」に沸いている。テレビ、雑誌、CMなどで猫を見ない日はない。「猫島」も注目のスポットだ。明確な定義はないが、徒歩で1周できるくらい小さくて、住民よりも猫の数が多いような島のこと。猫島を巡ると、かわいいだけでなく、それぞれの島が問題を抱えていることが見えてきた。ライター・瀬戸内みなみが「男木島」をレポートする。

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 香川県の男木島(おぎじま)も猫島のひとつだ。周囲約5キロ、人口約180人、猫は推定200匹。平日でも1日30人ほど、週末にはもっと多くの来島者がフェリーから降りてくる。その男木島で今年夏、先進的なプロジェクトが注目を集めた。島に暮らす猫全頭を対象に不妊・去勢手術を施したのだ。

 この取り組みの画期的なところは、たくさんいる猫を観光資源のひとつとして建設的に捉えていることだろう。猫島は、なんとなく猫が増え、なんとなくひとがやってくるようになった、というところばかりだ。しかもほとんどが過疎化と高齢化に悩んでいる。地元の自治体も住民も猫に対応できずにいるというのが現状なのである。

 男木島は2010年から始まった「瀬戸内国際芸術祭」の会場のひとつになっていることから、アートのある島としても知られている。

「猫と人間が共生する島として、猫島のモデルケースにしたいと思っているんです」と男木地区コミュニティ協議会会長、木場健一さんが語る。

「島の自然に囲まれて幸せに暮らす猫たちを見て、人間が癒やされる。そうなったら最高ですね。猫の餌やおもちゃ、グッズなどを島内で販売するようにすれば、雇用も増えるかもしれません。島に活気が出て、移住者が増えれば島の存続にもつながります」

 自然の中で自由気ままに暮らす猫。それこそが観光客の見たいものであり、観光的価値といえる。それならどうして、という疑問の声もあがるかもしれない。

 手術をして生殖の権利を奪うのは人間の身勝手なエゴではないのか。

 しかし現実はそうではない。多すぎる猫というのは、やはり不自然なのである。

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