同じ四国の高知は、横並び行動バイアスが46位と低い。岩中氏は「高知は三方を山に囲まれ、南は太平洋の黒潮と向き合う独特の地形。坂本龍馬を生んだ気宇壮大とも言える気風で、ほかの人と横並びの意識になりにくいのでは」という。

 矢野氏も同様な見方だ。

「最近、『キリンビール高知支店の奇跡』(講談社+α新書)という本が話題ですが、本のなかで高知は何でも一番が好きとのエピソードが紹介されています。そのとおりに、横並び意識が低い地なのです」という。

 横並び行動バイアスが47位と、高知以上に弱かったのは、意外にも鳥取だった。「この結果の読み解きは難しい」と岩中氏はうなる。

「鳥取は自然が厳しく、人口密度が低い。あえて言えば、本当は横並びや同調の意識で助け合いたいが、かなわずに自分で判断するとなるのでしょうか」

 鳥取は近視眼的行動バイアスが1位。その一方で、島根は46位。隣り合う県がなぜここまで違うのか。

 矢野氏は「鳥取はかつて因幡と伯耆(ほうき)に、島根は出雲と石見に分かれていた。それぞれ気質の違う地が一つになった県で、どの地域の人が答えたかなどによって結果が大きく変わるのかもしれません」という。

 島根は金融経済情報を見ない人の比率が高かった。

 近視眼的行動バイアスの上位の県は、東西を問わずに共通点がある、と岩中氏は分析する。

「1位鳥取、3位秋田、5位和歌山は、高齢者比率が高くて人口減少も進む『たそがれ系』の県。長期的な視点の上昇志向より、今のお金を大切にする考えの人が多いのかもしれません」

 横並び行動バイアスが高い県は、1位佐賀、2位本、5位鹿児島と九州が目立つ。岩中氏の見方はこうだ。

「『薩摩の大提灯、長州の小提灯』という言葉があります。鹿児島は西郷隆盛を生んだ地で、強い指導者に従って先導される気風があります。佐賀は江戸時代に鍋島家が長く治めた地。権威ある人に弱く、地域の仲間を大切にする気風です」

 沖縄は、金融知識が山梨の次に低い46位だった。

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