電力の切り替え時に家庭に設置されるスマートメーター (c)朝日新聞社
電力の切り替え時に家庭に設置されるスマートメーター (c)朝日新聞社

 プランや使い方によって数千円から数万円ほど安くなる「新電力」。今年4月から電力販売の自由化によって、数十社が家庭向け販売を行っているが、電力消費が最も高まる冬を前に、今こそお得で自分好みの会社に変更したいところ。実際に記者が電力会社の切り替えをしてみると、意外なことが分かった。横山渉がレポートする。

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 東京都内に住む記者は今春、東京電力から電気を買うのをやめ、東京ガスの「ずっとも電気2」プランへ切り替えた。

 主な動機は、電気代節約ではない。福島第一原発の事故を起こした東京電力からこれ以上電気を買いたくない、という思いだった。

 福島市と相馬市で幼少期の12年間ほどを過ごし、福島県は思い出の地。被害の大きかった沿岸部には今も知人が住む。事故による直接被害だけでなく、農産物や観光への風評被害に苦しむ人々の姿は、ひとごとに思えない。

 廃炉や汚染水など問題が山積みなのに、新潟県の柏崎刈羽原発を再稼働させようとする東電の姿勢にも納得いかなかった。

 今回の切り替えで、家計のムダも見直せた。

 戸建ての自宅は現在3人暮らしだが、電気の契約容量は祖母らが存命だった20年近く前から変えていなかった。住人が減って使う電気が減ったのに、容量はそのまま。自由化で切り替えを考えなかったら、ほったらかしだっただろう。

 東ガスへの切り替えと容量見直しが相乗効果となり、今年7月の電気代とガス代は計1万910円。昨年7月より、3956円(27%)も安くできた。

 記者のように購入先を切り替えた家庭が困惑したのは、東電管内でのスマートメーターの設置の遅れだ。

 切り替え時に必要な機器で、東電が無料で設置する。1月に東ガスへの契約変更を申し込んだ際は「順次交換していく」との説明を受けたが、5月下旬になっても自宅に設置されなかった。

 切り替え先の東ガスに問い合わせると、「メーター設置は東電さんなので」と歯切れの悪い対応。いまだに設置されないままだ。

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