以前は毎日プールで800メートル泳ぐのを日課にしていました。しかし、近くのホテルのプールがなくなってしまった。かわりに週に3回ジムで1時間のトレーニングを続けています。バランスボールを使ったストレッチとか自分の弱いところを鍛える個人トレーニングです。おかげで車椅子のお世話になることもなく、何とか自分の足で歩くことができています。

 それでも足腰が弱っているのは確かです。数カ月前のこと。定期健診で行った病院の玄関前でふらふらっとして転びました。顔面を強く打って大ケガをしてしまいました。手術が必要なほどで、左の眉の上、おでこのところは神経も取った。元気そうに見えても確実に老いは迫ってきます。大事なのはそれを自覚することです。

 35歳でテレビの脚本を書き始めて56年。テレビ放送が始まったのが約60年前ですから、私はテレビの歴史とほぼ同じだけ、この世界に身を置いてきたことになります。仕事が楽しくて仕方なかった。人生目いっぱい生きた感じがします。

 昨年12月から今年3月まで「飛鳥II」で海外クルーズに行きました。船の旅はお金はかかるけれど、楽でいい。行きや帰りの荷物やお土産も宅配便で届けてくれる。クルーズ船にはプールや映画や舞台、カルチャー講座などなんでもある。なんといっても、船旅では人物ウォッチングが楽しい。

 乗客は年を取られた老夫婦が多いですけれど、男性は一人では何もできなくて夫人についていくばかり。ときどき、夫に先立たれた女性もおられますが、とても元気です。それに比べると男性は寂しがり屋。一人では何をしたらいいのか困っている方も多いですね。

 いまのようなノルマに追われることのない暮らしは初めて。時間を好き放題使っていい。誰も文句を言いません。昼間から昔のテレビの再放送を見ては、亡くなった俳優さんを懐かしがっています。そんなテレビを見る一方の生活に漬かっていたら、また仕事ができてしまった。

 TBS「渡る世間は鬼ばかり 特番4時間スペシャル」(9月18、19日2夜連続放送予定)です。脚本の締め切りが迫って7月、1カ月で書き上げました。ゴタゴタもあって字を書くのも嫌だったんですが、好きな脚本書きだとできてしまうもんですね(笑)。

(構成/本誌・山本朋史)

週刊朝日  2016年9月2日号より抜粋