麻生さんによると、まず味付け全般で言えるのはシンプルだということ。使う調味料なども塩やニンニクが基本で、特別に辛いものなども主流ではないため、日本人の口にはよく合うという。

 料理には脂身の少ない赤身牛が多用される傾向があるが、例えば日本でも有名な肉の串焼き「シュラスコ」は地域によって好まれる部位が異なる。北東部の海岸沿いならば海の幸、北部のアマゾン川流域ならば川魚や森の幸、熱帯フルーツが特徴的など、地域によって料理に違いがある。

 シュラスコは、どこの家でも人が集まれば石段を組んで網を置き、肉を焼いて楽しむといい、共同住宅にも専用設備があるとか。ただ日本のレストランで見られるシュラスコは「エンターテインメント性、演出をつけたレストラン用のサービス」(麻生さん)という。

 料理では、ほかに魚介をココナツミルクで煮込んだ「ムケッカ」や、牛カツにトマトソースとチーズをのせた「パルメジアーナ」、豆の煮込みに牛や豚が入った「フェイジョアーダ」などもブラジル人のおなじみだ。

 各地に麻生さんおすすめの店やスポットもある。レストランでは、首都圏ならば川崎市川崎区にある「ボテコ コパカバーナ」、中部地方では名古屋市中区の「サプカイ」、関西ならば大阪市中心部に2店舗ある「バルバッコア」などなど。

 もっとディープに家庭料理を楽しみたいならば、日系ブラジル人が多く住む地域を訪ねるのもいい。栃木県真岡市や群馬県大泉町、横浜市鶴見区、浜松市、愛知県岡崎市や豊橋市、広島県府中町周辺といった地域に日系ブラジル人が多く住んでいる。

「日本各地にブラジル人のコミュニティーが存在します。そこに行けば家庭料理を楽しめる店がありますよ」(麻生さん)

 リオ五輪の期間中にブラジルレストランや国内の“リトルブラジル”で観戦すれば、ひと味違った五輪の夏になるかも。

週刊朝日  2016年8月19日号