ドラァグクイーンとしてデビューし、テレビなどで活躍中のミッツ・マングローブさんの本誌新連載「アイドルを性(さが)せ」。今回は、衆院議員・小泉進次郎さんを取り上げる。

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 参院選から早2週間。よくよく考えると、何のドラマも意外性もない、単に「数字(得票数と議席数)」を報告していくだけという、恒例の選挙特番祭りが、今回も全チャンネルで催されました。人間なんて所詮「数字」と「勝敗」にしか興味がないのかもしれません。別に誰も開票結果を逐一知る必要などないはずなのに、毎回あの「手に汗握る感」は何なのか。「だったら、もっと政治や選挙自体にも関心持てばいいのに」と揚げ足を取りたい気分になる私です。

 そうは言っても、ただ延々と「当落」を垂れ流すだけでは、2時間以上の番組は成り立ちませんから、各局とも様々な布陣やスタイルを駆使してお祭り感を演出します。例えば「候補者の事務所から声を潜めて中継する」なんてお馴染みの光景では、リポーターとして小島瑠璃子のスケジュールをどこよりも早く押さえたテレビ東京。さすが選挙特番には命を賭けてらっしゃる。バブル期のような景気の良さを、よもやテレ東の画面で観られるとは。っていうか、そこは局アナでいいと思うのですが……。

 もちろん政治の世界にもアイドルはいます。今は、なんてったって小泉進次郎でしょう。嘘だと思っていたら、本当に人気あるんですね。今回の選挙特番でも、各局ほぼ同時間帯に、それぞれ「追っかけVTR」を放送していました。進次郎さん、候補者でもないのに。押し並べて「全国で応援演説をする超人気者の進次郎氏」という扱いでしたし、スペック的(2世・政治家にしては高い顔面偏差値)にも、ポジション的(漠然とした将来性に溢れる若手)にも、その人気の質感的(インスタントカメラ持ってそうな追っかけマダム多数)にも、理想的なアイドルと呼ぶにふさわしい存在です。それが、どうしたものか個人的にはちっとも心躍りません。顔がタイプじゃないのはさておき、ずっとその理由を見出せぬまま、今までやり過ごしてきましたが、この度ようやく突き止めることができたので、ご報告させて頂きます。

 
 最近の職業アイドルは、どこか自意識が明確過ぎる上に、用意された「雛形」や「模範」をどれだけそつなく完璧にこなすかの競い合いみたいに見えるのですが、まさに進次郎氏からもそれと同じ印象を受けるのです。カラオケの採点機能や、太鼓の達人で高得点を出せる人が「優れている」とされてしまう、そんな点数至上主義の波が、歌やダンスはおろか、政治家の世界にまで押し寄せているということでしょうか。今や政治も「巧く」こなしてナンボのもの。田中角栄が八代亜紀ならば、さしずめ小泉進次郎はMay J.です。そりゃ退屈に決まってます。

 それにしても進次郎氏のやり方は、とことん「臭い」。巧けりゃ巧いだけ臭い。あれに政治家としてのカリスマ性を感じろと言われても、私はそんな真っ直ぐな心を持ち合わせた有権者にはなれません。それでもいつか、彼の中に潜んでいるであろう難儀な性(さが)を楽しめる日がやってくると確信はしているので、どうか今のまま、無闇やたらに得意気な進次郎流を貫き続けて頂きたいものです。May J.が、意地でも『ありのままの~♪』を歌い続けるように。

 そしてそんなそつない進次郎氏に心強さを覚える世の中に、私も何となく寄り添ってみようかな。いい加減そろそろ「アナ雪」観てみようかなって感じです。

週刊朝日  2016年8月5日号

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ミッツ・マングローブ

ミッツ・マングローブ

ミッツ・マングローブ/1975年、横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後、英国留学を経て2000年にドラァグクイーンとしてデビュー。現在「スポーツ酒場~語り亭~」「5時に夢中!」などのテレビ番組に出演中。音楽ユニット「星屑スキャット」としても活動する

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