国内はもとより、海外からのオファーが引きもきらない種田さんだが、海外の監督と最初に組んだのは、クエンティン・タランティーノ監督の「キル・ビルVol.1」(03年)だ。タランティーノ監督とは、2月に日本で公開された「ヘイトフル・エイト」でもタッグを組んでいる。

「海外の作家との仕事は未知数だし、思い通りにいかないことも多いから、あとで『こんなはずじゃなかった』なんて落ち込んでしまうこともある(苦笑)。でも、新たなものに食いつくのが好きなので、“これは初チャレンジになる”と思えたものは、受けるようにしています。今は、中国からのオファーがすごく多いですね。向こうは、電化製品に対する信頼と同じような感じで、『メイド・イン・ジャパンなら性能はいいはず』という思いがあるから(笑)。現場は、すごく風通しがいいですよ。人種とか肩書とか知識なんかにとらわれず、ただお互いの能力だけを認め合ってやっていけるので」

 今や、美術制作の現場には、種田さんを師と仰ぐ若手が、世界中に広がっている。優れたアーティストの感性は、そうやって時代や国境を超えて、長く深く受け継がれていく。

週刊朝日  2016年8月12日号