ケンブリッジ飛鳥(左)、山縣亮太 (c)朝日新聞社
ケンブリッジ飛鳥(左)、山縣亮太 (c)朝日新聞社

 いよいよ間近に迫ったリオデジャネイロ五輪。注目すべき選手の数は多いが、中でも陸上と柔道では海外にルーツをもつ選手たちの活躍が期待されている。

 今年になって日本陸上界に、彗星(すいせい)のごとく現れたのは、ジャマイカ人を父に持つ100メートルのケンブリッジ飛鳥(23)。6月の日本選手権ではライバルの山縣亮太(24)と桐生祥秀(20)を抜き去り、堂々1位でリオ五輪代表入りを一発で決めた。

 身長は180センチ、体重は76キロとけっこう重めだが、体脂肪率は4%と驚異的な低さ。その精悍(せいかん)な風貌(ふうぼう)と鍛え上げた肉体に、新聞や民放各社も相次ぎ特集を企画。そういえばケンブリッジ自慢の腹筋を「触っていいですか」となでた男性リポーターが1オクターブ上のビミョーな歓声をあげたとか。

 5月の東日本実業団選手権で自己ベストを0秒11更新する日本歴代9位の10秒10(追い風0.7メートル)をマークし、一気に日本人初の9秒台争いに名乗りを上げたケンブリッジ。所属先の株式会社ドームの安田秀一会長は「日本人で初めて9秒台を出したら1億円出す」と大きなニンジンをぶら下げ、ケンブリッジも「モチベーションが100倍になった。高級外車を買っても、おつりが出ますね」と、鼻息を荒くする。レースを離れれば、丁寧な言葉遣いと礼儀正しさが印象的なケンブリッジなだけに、もし1億円を手にするようなことがあれば、ラグビーW杯の五郎丸並みのブーム到来の予感も。

 2008年北京五輪男子4×100メートルリレーの銅メダリスト・朝原宣治氏は、ケンブリッジのほか、山縣、桐生とそろう男子100メートルの陣容について「間違いなく史上最高、かつてないレベルに達している」と話し、9秒台、そして100メートルでの決勝進出も夢ではないと期待を込める。

 男前ぶりではケンブリッジのあとを山縣が追う展開だが、10秒01と日本歴代2位の記録を持つ桐生も黙ってはいないだけに、3者がしのぎを削り合うことで更なる高みに到達できるかもしれない。

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