──内野手が守備範囲を広げるためには

 足の速さも関係しますが、一番は「スタート」です。打者が打ってからスタートを切るのでは遅いし、動けないんです。スタートに備えて体全体を動かしておく。静止状態から動き出すより速い。たとえばテニスの錦織選手もサーブを待つとき、足にしても上半身にしても動いていますよね。百何十キロの球は止まっていたら反応できないんです。サッカーのPKのときのゴールキーパーもそうですね。「動から動」を意識することが守備範囲の広さにつながってきますね。

──ピッチャーへの声かけで注意してきたことは

 キャッチャーの仕事はピッチャーを助けること。褒められて力を発揮するピッチャーもいれば、厳しいことを言われるとピリッといい球を投げるピッチャーもいます。ですから、普段の付き合いから判断しますね。プロになると、もっと具体的で、1球目はこれを投げて、2球目にこれを投げて内野ゴロを打たせてダブルプレーでピンチを切り抜けよう、とかね。どちらにしても日頃のコミュニケーションが大事です。

──古田さんはピッチャーによってミットの色まで変えていました

 1990年代前半にヤクルトのエース格だった岡林に「青色のミットのほうが集中しやすいです」と言われたことがきっかけです。それで他のピッチャーにも聞いたんです。抑えの高津は「緊迫している状況で冷静さなんて保ってられないですよ。気分を盛り上げて熱くなりたいんで赤がいいです」と言うので、いくつもミットを持っていました。

週刊朝日 2016年8月5日号より抜粋