一時は限界と思われた認知症の妻の介護生活、乗り越えたきっかけは (2/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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一時は限界と思われた認知症の妻の介護生活、乗り越えたきっかけは

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"中村伊久子さん(63、左)
59歳を機にそれまで働いていたパート先を退職。前頭側頭型認知症の診断を受け、現在「いずみの杜診療所」に通所、デイケアサービスを利用している
中村通さん(62)
会社員として働き42歳で独立。商品コンセプトの構築をおこなう。また、東北文化学園大学と同専門学校で建築とデザインについて非常勤講師として教えている(撮影/門間新弥)"

――電話の後、「いずみの杜診療所」地域連携室室長であり、介護福祉士の川井丈弘さんが自宅に来て、通さんがいま困っていることについてじっくり話を聞いてくれた。その後、伊久子さんと通さんは同診療所の山崎英樹医師(清山会医療福祉グループ代表)のもとを訪れ「前頭側頭型認知症」の診断を受ける。その診察はこれまでとは異なっていた。通さんの伊久子さんの言動に対する「どうして、なんでこんなことをするんだ」という疑問に答えてくれたのだ。

山崎医師「生活の変化がどうして起こったのか、脳の画像所見を絵に描きながらご主人に説明しました。ご家族がすぐに理解できなくてもいいんです。当事者の不思議な変化にふり回されてばかりいるよりずっといい。少しずつでも『この変化って病気のせいかな』と受け入れてもらえればいいと思います。伊久子さんには、健康的な生活パターンをつくるためにデイケアに通うことを日常習慣に取り入れるよう勧めました」

――しかし、当初、伊久子さんはデイケアに通うことを嫌がった。

川井さん「『来たくない』『暇』『寂しい』。いろいろな思いがあると思います。でも、ご本人に『デイケアに来てよかったな』と思ってもらうために、まず一つ、役割でも趣味でも見つけられるまでが大切だと考えています。その一つが見つかることで、ご本人が主体的にデイケアに通うように変わっていきます。私たちはみなさんの居場所づくりの応援をします」

――こうした支援を受けて、伊久子さんの様子も変わっていった。デイケアで伊久子さんから職員に「何か手伝うことはある?」と自ら声をかけるようになった。

川井さん「手伝うことを通じてまわりの人から『ありがとう』と言ってもらえることがうれしかったようです。そこから変わっていったように思いますね」

●15年12月

山崎医師「伊久子さんに、よりご自身の役割を取り戻してもらうことが大切だと考えました。そこで、『子どもが好き』という伊久子さんへ、『こども園』に通う子どものお世話を勧めました」

――しばらくすると伊久子さんはデイケアに行く前にこう話すようになった。

伊久子さん「『こども園』で、こたろうくんとみずきちゃんに会うのが楽しみ。待ってくれているから、いずみの杜に行かなきゃ」

●16年

――前向きに伊久子さんがデイケアに通うようになった頃、通さんも自分自身の変化を感じていた。

通さん「私と家内、どちらが先に変わったのかわからないですけどね。家内の様子に慣れていったこともあり、一緒に『育ってきた』んだと思います。山崎先生に説明していただいたことで、家内の困った言動の原因はわかった。そこで、私たちがそれを認めていって、変わらなきゃいけないな、と」
 
――そして、伊久子さんにも変化があった。

通さん「それまでは『~さんが嫌だ』と言うこともあったのですが、今ではまわりに感謝の気持ちを持っているようです。言葉もやさしくなり、人が変わったように思うこともあります」

山崎医師「病気の影響で苦手な部分はあります。でも、うまく付き合っていく方法を見つけていけばいいんです。また、伊久子さんは今、毎日を楽しく、そしていきがいを感じています。不安感もない。ご家族やいずみの杜で出会う人たちとの社会があって、それがうまくいっていることが一番です。どう『よりよく生きるか』が大事です」

――最近、通さんは「伊久子さんと心が通じ合っている」。こう感じるようになってきたという。伊久子さんは「毎日がしあわせ」と話す。通さんと伊久子さんは、認知症を通じて、より深い新しい関係を築いていっているようだ。

週刊朝日 2016年8月5日号


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