東の前頭9枚目、草津町(群馬県)は返礼品が二つだけ。温泉の「入浴10回券」と、町内の旅館や飲食店で使える「感謝券」。感謝券は寄付1万円で、5千円分。13カ月間有効で年末の温泉旅行にも使える。

 こうした品は「ふるさとチョイス」などの寄付先選びのポータルサイトを使うと、簡単に探せる。一方で、その自治体のホームページを見ないと発掘できない“お宝品”もある。

 東の前頭13枚目、日立市(茨城県)は炊飯器や空気清浄機など「HITACHI」ブランドの家電品がある。西の関脇、備前市(岡山県)もヘアドライヤーなどを用意する。

 ただ、「ふるさと」のサイトで探してもこれらは見つからない。返礼品競争を戒める総務省の通知もあり、「ふるさと」は転売しやすい品を原則的に掲載しないためだ。

 寄付金を集める自治体は住民サービスの充実や産業振興を進めている。東の大関、天童市(山形県)は昨年度に18万件、計32億円を集めた。子どもの医療費無料化や伝統工芸振興などの財源に充てている。

 返礼品は米や果物に加え、1万円以上を寄付した市外の人に将棋の駒のストラップを記念品に贈る。名前も彫ってくれて人気だ。

 駒は同市の伝統工芸品で生産量日本一。将棋駒産業の売り上げは、返礼品導入前の13年に約1.2億円だったが、15年は約3億円。雇用も増えた。
 ただ、「特需」はいつまで続くかわからない。

 うなぎやマンゴーが人気の西の大関、大崎町(鹿児島県)。町役場の担当者は「今はバブル状態。返礼品の事業者には、浮かれずに販売力をつけましょうと言っている」と話す。同町は特産品の生産や販売を一体で強化するため、2月から業者向けに販路開拓などのセミナーを始めた。参加者が多く、「町に活気が出てきた」という。納税制度の切れ目が縁の切れ目、とならない工夫が問われる。

週刊朝日 2016年8月5日号より抜粋