ダバダバダ、ダバダバダ……(※イメージ)
ダバダバダ、ダバダバダ……(※イメージ)

 ダバダバダ、ダバダバダ……。思わず一緒に口ずさみたくなる曲がある。忘れがたい恋する男女の映像が流れる。フランスの映画監督クロード・ルルーシュ(78)と作曲家フランシス・レイ(84)による緊密な協業が生み出した名作映画「男と女」。公開から半世紀を迎えた今、2人の思いを聞いた。

 1966年に公開された「男と女」はカンヌ国際映画祭でグランプリに輝いた。

 亡き人への思いを引きずりながらも、恋にひきこまれていく男女を描く。男はジャン・ルイ・トランティニャン演じるレーサー、女はアヌーク・エーメ演じる映画のスクリプター。いずれも子どもがいる。熱情があり、戸惑いがあり、揺れる心理の描写は精巧を極め、時に挟み込まれるモノクロやセピア色の映像が陰影に富む世界を演出。ほろ苦く、早春の風のような喜びの予兆も感じさせ、成熟した恋愛像が立ち上がる。

 ルルーシュが言う。

「50年の歳月に耐えられる何かが作品にあるということでしょうか。私自身も良い作品だったと確信できるようになりました」

 この傑作の中で、けだるい曲調で、もつれた糸をまさぐるように男女によって歌われるのが「ダバダバダ……」。男の歌い手は、映画にも出演しているピエール・バルーだ。作曲したレイは、音楽制作で共作していたバルーの紹介でルルーシュに会った。ルルーシュはレイの曲を気に入り、映画全編の音楽を依頼。シャンソンを中心に活動してきたレイにとって初めての経験だった。

「映画音楽は難しく、私などが立ち入る領域ではないと思っていた。でも監督は『僕が必要としているのはシャンソン(歌)なんだ』と言って安心させてくれた。映像と音楽の相互浸透が生まれたのです。その証しに、私たちはそれ以来50年間、コンビを組んでおり、互いの視点も変わっていません。私たちの仕事の進め方はユニークです」

 2人が組んだ映画は「パリのめぐり逢い」「愛よもう一度」「愛と哀しみのボレロ」「しあわせ」など30作を超える。どの作品にも、映像と音楽の有機的な連関がある。

 レイはこう明かす。

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