CIAやロッキード社のカネを受け取っておきながら、逮捕もされず、公表もされなかった政治家がいた。米政府にロッキード事件を「もみ消す」よう要請したとして米公電に名前を刻まれながら、それを隠しおおせた政治家がいた。

 もし70年代、80年代にそれが発覚していれば、それら政治家の政治生命に致命的な悪影響を与えただろう。つまり、それは彼らの弱みとなった。そして、それら政治家の中には、のちに首相に上り詰めた人が複数いたし、暴露に怯え続けた末に自死を選んだ人もいた。

 そうした事情が判明したのはいずれも2006年以降のこの10年のことだ。

 日本政治の枢要な地位にあった人たちが米政府に弱みを握られ、その「虎の尾」に怯え、恐怖や懸念、不安を抱え続けてきたのだと考え当たったとき、私は暗然とする。

 40年を経ようという今になって初めて秘密を解かれつつあるロッキード事件はそうした問題を私たちに提起し、突きつけている。(敬称略)

週刊朝日  2016年8月5日号より抜粋