北原みのり「東京都、不運続き」

連載「ニッポン スッポンポンNEO」

 作家・北原みのり氏の週刊朝日連載「ニッポンスッポンポンNEO」。北原氏は混乱が続く都政に不安を募らせる。

*  *  *
 テレビ見てたら、猪瀬直樹さんがクイズ番組に出ていた。高学歴芸能人に交じって猪瀬さんは、本気で1位を狙っているように見えた。間違えると恥ずかしそうにし、難問をクリアすれば、当然ですよ、みたいなポーカーフェイスでニコリともしない。タレントなのか、ジャーナリストなのか、ただ物知りなオジサンなのか……よく分からない登場だった。それにしても、なぜこの人が430万票も獲得したんだろう……あの時の空気がまるで思い出せないんですけど……。

 都知事選といえば、2003年、石原都政に対抗して出馬した樋口恵子さんの選挙が忘れられない。樋口さんは、勇ましい石原慎太郎都知事を「軍国おじさん」と呼び、ご自身を「平和ぼけばあさん」と名付けて闘った。樋口さんは石原さんと共に1932年生まれの、当時70歳だった。

 石原さんは第1期の都知事時代、「閉経した女は地球にとっては弊害」というようなことを、他人の口を借りるようにして雑誌で発言し、女性たちに訴えられた。樋口さんは、女たちの怒りと悔しさを代弁するように、ジジイとババアの闘いに臨んだが、石原さんの強さは圧倒的だった。世間は女性差別発言など、すぐに忘れてしまうのだろう。知恵あるババアではなく、威張るジジイを信頼するのが都民の現実なのだ。

 石原さんは、尖閣諸島を東京都が買い取ると言い出し寄付を集めたり、東京オリンピックに固執したりとでかい花火をあげてきた。一方で、男女共同参画を支えてきた東京女性財団を潰し、養護学校で性教育を行った先生たちを処分するなど、男女平等や性に関する活動を冷酷に切り捨てた。

 壊したものを立て直すのには、築くための時間よりも数倍かかるのだ。女子どもが大切にされない都政で、保育園の実質的な待機児童数は減らず、90年代に活発だった都内の女性センターは、骨抜きにされた。外国人差別発言を平気で放つ都知事のもと、ヘイトスピーチデモはじわじわと広まっていった。

続きを読む

TwitterでAERA dot.をフォロー

@dot_asahi_pubさんをフォロー

FacebookでAERA dot.の記事をチェック