津田大介「黒船キンドル、新サービスの行方」 (2/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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津田大介「黒船キンドル、新サービスの行方」

連載「ウェブの見方 紙の味方」

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紙の本は…(※イメージ)

紙の本は…(※イメージ)

 この分配方法に大きなポイントがある。半額にあたる4億9千万円をサービス開始時の5万5千冊で割ると、出版社が1冊あたり毎月得られる収入は9千円弱。実際にこうしたサービスで読まれる本はごく一部のベストセラーやビジネス書、自己啓発本などが中心で、ほとんどの著者や出版社は月々数百~数千円といった微々たる収益しか得られない。普通に書籍を発売するか、キンドルで単体販売したほうが収益率は間違いなく高くなる。

 月額固定料金を支払うことで、ユーザーが登録されたコンテンツを楽しめるという意味では音楽の「聴き放題」サービスが先行しているが、音楽は音源を聴いて興味を持ったリスナーを「ライブ」に来させて回収することができる。だが、書籍の場合、「ライブ」に相当するものがないため、書籍の販売で得られる収益構造を守らなければ、中長期的に見てジリ貧になっていくだろう。

 キンドル・アンリミテッドは日本の出版業界にとって、大きな黒船となる可能性が高い。報道によると、アマゾンは出版社の参加を促すため、サービス初年度は、単品販売と同額を出版社に支払う特別条件を提示しているという。目先の金欲しさにこれに飛びつくのが果たして正しいのか、大手出版社は難しいかじ取りを迫られている。

週刊朝日  2016年7月15日号


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津田大介

津田大介(つだ・だいすけ)/1973年生まれ。ジャーナリスト/メディア・アクティビスト。ウェブ上の政治メディア「ポリタス」編集長。ウェブを使った新しいジャーナリズムの実践者として知られる。主な著書に『ウェブで政治を動かす!』(朝日新書)

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